『嘘だらけ』発条仕掛けの魔法使い

 夕陽に染まる屋上で、陰に潜んで君がリクを振るところを見ていた。


 何度も心の中で唱えたのだろう。

 口に出してもみたのだろう。

 きゅっと力なく握られた手とは裏腹に、


「ごめん。リクとは付き合えない」


 そんな言葉は彼女の口から簡単に出て来た。

 瞬間、橙色のやわらかな光に照らされていた彼の顔が真っ青になる。


 ああ、今、君の感情は想像するに難くない。

 でも、好きな相手に振られるなんて、幸福な部類の絶望だ。


「ああ、良かった」


 屋上を後にしたマキちゃんの姿を確認し、彼が一人佇む光景を目にして言葉が漏れる。


「これで……君は死なずに済むはずだ」


 そして、僕は元の時代へと戻った。

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