第4話 恋人と交通事故
「私と恋人になると……リクが死ぬ?」
一瞬、彼が何を言いたいのか、意味がわからなかった。
だけど、悪い冗談はやめてと怒鳴ったり、その言葉を一蹴する気にもなれない。
私にできたのはただ表情を引きつらせて、魔法使いの次の行動を待つことだけだった。
「見せてあげるよ」
さっきまで紅茶を注いでいた彼の手のひらが視界をふさぐ。
すると、カチカチという小さな金属音がした後……頭の中に見知った光景が浮かんできた。
「ここ……近くの商店街?」
まるで自分がその場にいると錯覚するようなリアルな映像が周りを取り囲む。
さらに、映った商店街に手を繋いで歩く自分とリクの姿が見えたものだから、没入感はさらに増していった。
うつむきがちに二人並び、指先を触れ合わせるように繋いでいる手が……そう、初々しい。
幸せな光景だなと感じたし、もしかしたらこれは私が抱く願望なんじゃないかと錯覚しそうになる。
しかし。
「なに、それ?」
直後のことだった。
向かいから見知った運転手の乗ったトラックが走って来て、私達は手を離す。
お互いに照れ笑いを浮かべながら運転手へと小さく手を振った。
すると、運転席で胸を押さえ体を丸めた運転手と……自分達に向かって突進してくる巨大な鉄塊が見えて、
二人の体が軽々と撥ねあげられた。
骨の潰れる音が聞こえて……ぐったりと動かなくなったリクの体に、私の心は熱を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます