第3話 ティーカップと予言

 カップに紅茶を注がれながら、ぐるんと辺りを見る。


 (ここ、さっきまで学校の屋上だったのに)


 思わず幻覚を疑うけど、差し出されたケーキは確かな甘い香りを放ち「ここは現実だよ」とでも言いたげだ。


「あなた、本当に魔法使い?」

「見せた通りに」

「……目的は?」

「今は君に機嫌を直してもらうことかな」


 なんて言われたけど。

 機嫌を直すも何も、この状況に圧倒されてばかりで怒っていたことも忘れてしまいそうになる。

 まぁ、リクに告白されないとわかって落胆しているというのは否めないけど……。

 でも、それにしてもだ。


「ねぇ、なんでリクの名前を使って私を誘ったの? 嘘のラブレターまで書いて」

「そうすれば君が来るってわかっていたからかな」

「わかってた?」

「ああ。だって明日、君は本当に彼からラブレターをもらうからね」

「明日、私がリクからっ!?」


 落ち込んでいた気持ちが一瞬で跳ね上がる。

 けど、


「でも、君達は恋人にはならないよ」


 予言めいた言葉で、すぐに気分は下降した。


「……なんで?」

「だって、君と結ばれると彼は死ぬことになるからさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る