第2話 JCとカフェテリア

 魔法使い?

 そう告げたのは黒いシャツに白いスキニーパンツを履いた白髪の男性だった。


「……不審者の間違いじゃないですか?」


 真っ白な髪は確かにどこか幻想的ではある。

 でも、銀髪と言えるほど綺麗じゃないし、ラフな格好のせいで私が抱く魔法使いのイメージからはかけ離れていた。


「せめて真っ赤なカラコンを入れて、吸血鬼だくらい言ってほしかったですね」


 実に日本人らしい黒い瞳を覗き込みながら文句を言うと彼は静かに微笑む。


「そうか。なら、次の機会には君の言葉に従うよ」


 優し気な声だった。

 でも、どこか疲れを感じさせる冗談めいた声色に、思わず『何、この人?』と、好奇心が警戒心に勝ってしまいそうになる。

 本当なら今すぐにでも職員室へ走って、不審者の存在を知らせないといけないのに。


 なのに、


「しかし、それでも、だ」


 彼がパチンと指を鳴らした途端、屋上にいた筈の私は無人のカフェテリアにいて……、


「えっ?」

「それでも、僕は魔法使いなんだ」


 もう、逃げることはできなくなってしまった。

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