JCちゃんは魔法使いの嘘に騙されない!~発条人型は吸血鬼の夢を見るか~

奈名瀬

第1話 ラブレターと魔法使い(不審者)

 今、中学生にもなってスマホを持っていない私の手にはラブレターが握られている。

 差出人はリク。ずっと片想いをしていたと思っていた幼馴染からだ。


(特別だと思ってたの……私だけじゃなかったんだ)


 ラブレターがよれたりしないように大切に抱きしめながら、彼に指定された屋上へと向かう。

 階段を登る最中も心臓は鳴りっぱなし。

 けど、もうすぐリクと恋人同士になれる。

 そう思うとこのまま死んでもいいとさえ思えた。


 屋上へと続く大きな鉄扉。

 胸の奥が締め付けられるみたいに苦しくて、手のひらに汗がにじむ中――ドアノブへと手をかける。


 ギィッ……と錆びた音が響き、外の空気が流れ込んできた。

 しかし、勢いのよい隙間風に目をつぶり、次に目を開いた時――、


「やあ、君ならきっとがっかりしてくれると思っていたよ」


 ――目の前に現れたのは私が恋心を抱いたリクではなかった。


「……あなた、誰?」

「僕は魔法使いさ」

「……は?」

「すまないね、君の王子様じゃなくて」

「いや、そうじゃなくて――」

「それじゃあ、警察なりなんなり呼ばれる前に、まずは君のご機嫌取りから始めよう」

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