第12話 授与式④ 神鳥の扱いは慎重に


――舞台は戻って授与式の受付――


「いやいやいや、何を言ってるんだい?招待状がなければ年齢も身分もなにもわからないじゃないか!…リオラ、冗談だよね?」


「そ、そんなこと言われてもなー。…うちにだけ届け忘れとか?」


「いえ、そんなはずはありません!一月前にギルドが飼ってる神鳥カリオスが16歳になる方へ届けにいったはずです!」


「カリオス?そんな鳥知らないぞ!」


「カリオスっていうのは聖職者ギルドが通信に使用している鳥のことだよ。」


「鳥かぁ…。うーん…。あ、そういえばちょっと前に子分のポンタが家の前で『見たことない鳥がいるよ!』って騒いでたことがあったなー。」

リオラは自分の記憶をたどる。


「…それでどうしたの?」

ルークは今までのリオラの行動を知っているだけに、嫌な予感しかしない。


「うん?あぁ、俺もさー、見ようと思って部屋の窓開けたんだよ。そしたらちょうどその鳥が窓から部屋に入ってきてさー。びっくりしたんだけどせっかくだからと思って捕まえてポンタと一緒に焼いて食べたんだっけ。まぁでもあんま美味くなかったなー。何でも食ってみたらいいってもんじゃないな!」


反省反省とうなずくリオラ。


……

………。



「もしかしてその鳥、頭の毛が少し黄色くて羽が緑色じゃなかった?」


「おっ!そうそうそんな感じの!あれなんて鳥なんだ?」

リオラの問いかけにこめかみを押さえて頭を横に振るルークと青ざめた顔で口をパクパクする受付のモニア。


「…僕は先に会場に入っておこうかな。」


「はい、かしこまりました。ルーク様はこのまままっすぐ進んでくださいね。」


「えぇぇぇ!?なんでだよぉ!俺は?」



――その後ルークはその鳥のことをリオラに説明した。



「あちゃー、あれがカリオスって鳥だったのか。てことは部屋のどっかに招待状も落ちてくるかもな!うわーねぇちゃんに見つかったら帰ってからめっちゃ怒られるー」

リオラは姉サテラの怒っている顔を思い浮かべ頭を押さえる。


「いやいやいや、そんな悠長なお話しじゃなくて大問題ですよ!ギルドが大切にしているカリオスを食べてしまうなんて…。場合によってはギルド総出であなたを処分することになるかもしれない事態なんですよ!一応聞きますが、家名は?」


「家名?あ、名前のことね。リオラ=イグリード。」


「イグリード…。すみません、無知なもので聞いたことがなくて…。あのーご出身はどちらでしょうか?」


(はっ!しまった。スタール家のお友達ってことは有名な貴族様に決まっているのに。初対面の印象は重要なのに…、なんてミスを…。)


モニアは自分の失態を責めるように頭を押さえうなだれる。


「だ、だいじょうぶか…この人…。俺は生まれも育ちもマレラだけど?」


「へ?マレラってあの?」

モニアは顔を上げリオラを見る。


「おっ!なーんだ、知ってる人いるじゃん!やっぱルークが世間知らずなだけだったんだな!」


「……君にだけは言われたくないな。」

ニヤリと笑みを浮かべ突っつくリオラとそれを冷めた目で見るルーク。

しかしモニアにはその二人の会話は耳に入らない。


(なんでなんで!?マレラってうちの町よりド田舎じゃない!なんでそんなところの子が貴族と仲良くしてるのよ!)


「おほんっ!イグリードさんの処遇はギルドに報告してから改めて通知するので今日のところはマレラへお帰り下さい。」


「えっ儀式は?」


「当然受けられません!」


モニアの言葉を聞き、助けを求めるようにルークの方を見るリオラ。


「ちなみにルークの顔に免じて許してもらえたりは…?」


「無理です。」


「そんなぁ。」


「リオラ、短い間だったけれど君は最高の友人だったよ…」

ルークは下を向きリオラの肩を叩く。



「オーマイガァー!」

リオラは目の前が真っ暗になった…。


……

…………


「って、え?ほんとに真っ暗に…おわっ!」

リオラの目の前にスキンヘッドの大男が現れ、思わず後ろに下がる。


「な、なんだよおっさん!びっくりさせんなよ!」


「―帝国騎士団長ディオメデス!?」

ルークは驚きの表情で大男の名を叫んだ。


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