第11話 授与式③ ~キゾク に キヅク? ~


リオラはルークにさきほど起こったことを説明した。


「なるほど…。彼女がなんで気絶したかはわからないけど、女医の手を弾いた拒絶なんちゃらってやつはおそらく魔力拒絶体質にことかな。それが彼女の代償ノクシャスだろうね。」


「…ノクシャス?なんだそれ?」


「……へ?」

ルークは目を丸くしてリオラを見つめる。


「…よぉし!そろそろ受付に行こう。」


「いやいやいやいや、ノクシャスってなんだよ!」

突っ込むリオラを放ってルークは足早に受付へと向かった。


―  ―  ―  ―  -  ―  -  ―  -


「はぁー、じゃあ基本的なことから説明するよ。」

急いで受付に行ったものの、結局混んでいたため列に並びながらルークは説明することになった。


「じゃあ、まずは天賦ゲインからね」


「はいっ!せんせい!」


「よろしい。」


             【天賦ゲイン


・物体に命を宿すときに神が与えし特異能力。

そのためどのような生物であっても1つのゲインが与えられている。


・ゲインは無数にあると考えられているが、他人と同じゲインを持つことや遺伝で引き継がれるゲインも存在する。


・大きく分けて、【戦闘ゲイン】【生活ゲイン】【特殊ゲイン】の三つに大きく分けられる。






「ゲインは特異能力、と。ふむふむ。―うん?でもおかしくない?」


「何が?」


「ゲインって生まれたときからみんなもってるんだよな?でも生まれたときから今まで特異能力なんて特になかったし、もしかしてオレってなんの天賦(ゲイン)も…。」


「そっか、じゃあリオラはゲインなしのダメ人間だ!」


「そ、そんなぁ~」


とリオラはショックでうなだれる。


その様子を見てルークは「ふふふっ」と笑う。


「うそうそ、冗談だよ。」


「へ?」


「さっきも言ったけどゲインは命ある物全てに与えられるから。ただ多くの人は自分のゲインが一体なんなのかわからずに育って授与式とかで鑑定してもらって初めて自分の特異能力がわかるから、別にリオラがおかしいってわけじゃないよ。」


「なんだよー脅かすなよー。」


「ごめんごめん。そんなにショック受けるとは思わなくて。」

ルークは笑いながら手を合わせる。


「ちぇっ。ってことは今日の授与式で自分の才能がわかるってわけだな!」


「そうそう!授与式っていうのはゲインが授与されるわけではなくて聖職者プリーストギルドの鑑定士が鑑定してくれるってだけ。」


「なーんだ。授与式って言うから神様みたいな人がなんか、こう、『ピカー』みたいな感じでゲインをくれるのかと思ったのに。」


「ははは、確かに授与式って言うと大げさな感じだよね。ちなみに【神託オラークル】って魔法で鑑定できるんだけど、聖職者ギルドに入りたい人はみんな使えなきゃいけないみたい。だから他のギルドに比べて聖職者ギルドは人数が少ないんだよね。」


「へー。」

リオラは遠くをぼんやり見つめながら短く返答する。


「…聞いてる?」


「へー。」


「だめだ、完全に理解出来なくて頭パンクしてるな。」


その後受付の順番が自分たちに回ってくるまでリオラの様子は変わらなかった。




「そういえばさっき言ってたノクシャスってなんだ?」


「ノクシャスっていうのは―」


「はーい、次の方―どうぞー。」

リオラ達は受付のお姉さんに呼ばれる。


「じゃあ続きはまた今度ね。」


「はいっ!先生!」



―  ―  ―  ―  ―  ―  ―


受付は三つの窓口があったがリオラ達が呼ばれた一つを除いて他は片付けの作業に入っていた。


「初めまして!受付のモニアです。じゃあ、さっそく年齢証明書と参加証明書の提示お願いします。」

茶色の髪色をした若いお姉さんが元気よく話しかけてくる。


(はぁ~貴族の受付担当になれたから金持ちとお近づきになれるかと思ったけど、大したことない将来性の欠片も感じないおぼっちゃまばっかりで私の魅力も持ち腐れだわ。)

心の中でつぶやくモニア。



ルークは紙を取り出しモニアに渡す。


「はーい、確認しますね。」

(さて、この子はどのくらいの金持ちかな?)


-ID157684 ネーム ルーク=スタール スタールケ キゾクグループ

モニアの前にある機械が読み上げる。


「えっ、スタール家ってあの…」

ルークの名前を聞いた途端モニアは驚きの表情を浮かべそこから青ざめ始める。


「ス、スタール家の御子息の方でしたか。も。もうしわけございません。」


「へっ?いや、別に謝られるようなことは何もなかったですよ。」


「いえいえいえいえいえわたしなんかが」

モニアはしきりに首を振る。


(落ち着きなさい、わたし!よく考えてみればこれはまたとないチャンスじゃないの

!このおぼっちゃまと仲良くなっておけばパーティなんかにも招待されてお金持ちのおじさま方と…。)


「えへ、えへへへへ」


「うわー、なんか笑ってるよ。気持ちわりぃなこのねぇちゃん。」

よだれを垂らしながらニヤつくモニアにドン引きする二人。


「てか、ルークってそんなすごいやつだったのか?」


「ただ家の名前がちょっと有名なだけだよ。」


「あら、いけないいけない。えっとではルーク様のお友達の方も招待状の提示をお願いいたします。」

モニアがよだれを拭きつつ、リオラに手を差し出す。


「うん?」


「いや証明書を…」


「さっきから思ってたんだけど、うちにはそんな紙届いてないけど?」


……


「「へ?」」

気持ちがいいくらいモニアとルークの声がハモった。


ーそのころリオラの実家では


「あの子、ちゃんと街には着いたかしら?そそっかしいから何かトラブル起こしてなきゃいいんだけど…。」

お姉さんがほうきを掃きながらそんなことを考える。


「はぁー、またあの子はこんなに部屋を散らかして。いったい誰に似たのかしら。…うん?この紙は何かしら?」

サテラはリオラの部屋の隅から出てきた一枚の紙を手に取り読み上げる。


「えっと、なになに、『この度は成人おめでとうございます。ゲイン授与式が行われますので前半の部にご参加ください。みなさまのご参加心よりお待ちしております。 ~聖職者ギルド一同~』」


「――あのおバカ!これ持って行かなかったら鑑定してもらえないじゃない!あー…もう儀式終わってるわよね。」


「はぁー」っとため息を一度吐き、ほうきを置いてベッドに腰掛けた。


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