第10話 授与式② ~レオンちゃん現る~
バチバチッ
「っ!?これは…まさか魔力拒絶体質…。」
アケイアは拒まれた自分の手を擦りながら少女を見つめる。
「お、おい大丈夫か?」
「まさかそこまでの魔力が…。えっ!?でもそれならこの少年はどうして…?」
アケイアはリオラの顔を不思議そうに見つめたまま固まる。
(ほー、今年は面白いやつが多いな)
ざわめく周りの中で笑みをこぼす者が数名。
「おーい、どうしたー?」
固まるアケイアにリオラが心配そうに呼びかける。
「あっ、いえなんでもないの。私じゃ触れることはできないからレオンちゃん彼女を運んであげて。」
アケイアが呼びかけると突如そこから何かが現れる。
「なんだこいつ!?でかい…カメレオン!?」
リオラだけでなく周りにいた誰もが顔をあげる。
「こいつどこから現れたんだ?」
レオンと呼ばれるカメレオンはリオラに近づき舌で少女を巻き上げる。
そしてそのまま少女を丸呑みしてしまった。
「…えええぇぇぇぇ!?なにしてんだよ!?化け物に呑み込まれちゃったぞ!」
「化け物って…。この子は私の召喚獣のレオンちゃんよ。」
アケイアはちょっと膨れたレオンのお腹を撫でる。
「レオンちゃんは魔力を吸収するから魔力拒絶体質の彼女でも大丈夫ってわけ。しかもレオンちゃんの胃の粘液は疲労やケガの回復効果もあるから運びながら治療もできるわ!」
「うーん、召喚獣とか拒絶なんちゃらとかよくわかんねぇけど任せちゃって大丈夫ってことだな!」
そっかそっかとリオラは安心して肩の力を抜く。
(フフ、全く見ず知らずの人をここまで心配するなんて変わった子ね。それにしても今年は面白い子がたくさんいるわね。私の魔力すら払いのけてしまうこの少女もそうだし、なによりこの少女に触れられる彼は―)
「…さすがに何人かは気づいているようね。」
アケイアはざわつく周りを見てそうつぶやく。
「うん?なんか言った?」
「ううん、なんでもないわ。じゃ、わたしはこの子を連れて行くわね。君とは近いうちにまた会えそうね。」
少女を丸呑みしたレオンとアケイアは聖堂の方へ消える。
集まっていたスカウトたちもしばらくは騒いでいたが、授与式の後半組がもうじき始まるということで一人また一人と聖堂へ向かう。
「はぁー、いきなり倒れてきたからびっくりしたなー。あっ!あいつのゲイン聞きそびれたぁ。」
なぜ少女に声をかけたのかを思い出し悔しそうに天を仰ぐ。
「キュイッ」
するとクロンがリオラの頭の上から背中へと避難する。
「おっ?どうした、クロン?また眠くなったの―」
ゴツンッ
鈍い音が響く。
「いってぇ!なにすんだいきなり!」
頭を擦りながら振り返るとそこには痛そうにこぶしを擦るルークがいた。
「おっ、ルーク!」
「『おっ、ルーク!』じゃないよ!勝手に突っ走って。それよりリオラの頭にはいったいなにが詰まってんだよ…硬すぎて僕のこぶしが…。」
「わりぃわりぃ。すごいやつがいると思ったら身体が勝手に動いちまった。」
ごめんと笑いながら手で謝るリオラにルークは肩をすくめる。
「それであの女の子、どうしたの?」
「あぁ実は―あっ」
リオラは立ち上がろうとすると、コトンッと何かが膝から滑り落ちる。
「これどうすっか…」
リオラは頭を掻きながら手元のゴーグルを見た。
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