険しい顔の幼女

「しかし、まいったな……


あんなに目立つ幼児と

二人で暮らすなんてことになったら


それこそ性的虐待目的で

一緒に暮らしているのではないかと

ご近所さんに勘違いされかねない


それこそ私が通報されて

逮捕されてしまいます……」


私は強面こわもてという訳ではないが、

いい年をしたおっさんで


見た目だけで言えば、

それこそ人身売買の連中と

そんなに変わらないのではないか

という気がする。


ご近所さんには

身寄りの無い独り身ぐらいに

思われているので、


あの子と一緒に暮らしはじめたら

本当に何を言われるか

分かったものではないだろう。



とにかく子供の方が目立ち過ぎるのだ。


本人には非が無いので

大変申し訳ないが、


一般人がイメージするところの、

ロリコンが好きそうな幼女のまさに典型、

幼女の象徴と言っても過言ではない。


そんな子と中年のおじさんが

一つ屋根の下、

二人きりで暮らしているなど

後ろ指さしてくださいと

言っているようなものだ。



「それに、

実際にあの子の面倒とか、

身の回りの世話とか……


ちょっと私には出来そうもないのだが……」


これは更に深刻な問題で


そもそも私は

他人との接触に対して

極端に抵抗があるというのにだ。


もっと子供らしいアホな子とか

男の子であるらならいざしらず、


あんな大人みたいな子供で

しかも女の子で、


着替えを手伝ってあげたり

お風呂で体を洗ってあげたりなどなど、


そんなことが出来る筈もない。


そんなところを

もし誰かに見られでもしたら、

それこそ本当に

事案扱いされてしまうではないか。



「それでは、私も一緒に暮らす

というのはどうでしょうか?」


身を乗り出して

顔を近づけて来るジル。


彼女も何とか

このまま押し切ろうと必死だ。


「ファニー様の面倒、身の回りのお世話は

すべて私がやりますから」


「そりゃ、

もし養子をもらうのであれば、

家政婦さんを雇わなくてはと

思ってはいましたが……」


「家政婦! なるほど!


それでは私は

住込みの家政婦ということで!」


なんか突然、

元気になって来たように見えるのだが


「ちょっと、待ってください……


あなたのような若い女性と

一緒に暮らすというのは……」


「いえいえ、私は大丈夫です、

全然、気にしておりませんので」


いえ、私が気にしているんですが……


「もしご近所の方に勘ぐられたら、


内縁の妻とその連れ子、

そう言っておけばいいじゃあないですか」


いや、それが、最悪なんですが……


しかし、それでも

ロリコンの変態中年おやじと思われるよりは、

まだちょっとはマシというものか……。


-


試しにちょっと

孤児院を見学しに来ただけだというのに


まさかの

金髪碧眼幼女を即決お持ち帰り

になるとは……


金髪の少女ファニーを

今ジルが必死で説得している。


さすがに本人が同意しなければ

無理矢理に連れて行くことは出来ない。



美しいのは間違いないのだが、

この子はいつも怒っているのだろうか?


目も大きく凛々しくて

睨まれているようで

威圧感が半端無い……。



ジルのファニーをはじめとする

孤児院スタッフへの必死の説得もあり、


とりあえず美しい野生の狼は

我が家へやって来ることになる。


「それでは、私は今晩、

今住んでいるアパートの荷物をまとめて


明日の朝には、荷物を持って

旦那様のお宅に伺いますので」


「えっ? あっ、ちょっ!」


人が止めようとするのも無視して、

張り切って全速力で

走って消えて行くジル。


私の横には、

金髪碧眼の幼女が一人立っている。


いや、待て、

今夜はどうするんだ!?


まさか、自分とこの子、

二人きりなのか!?


横に居る小さい彼女の顔は

険しい顔をしているように見える。


やはり、怒っているのだろうか……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る