山田さん、ヒロインと出会う
美しい野生の狼
「結構、古いな……」
養子について
試しに問合せてみたところ、
ここへ来るように言われた。
孤児院の建物は
かなり老朽化しており、資金的に
運営が厳しいのではないかと感じさせる。
いっそ、
ここに寄付でもいいような……。
たまたま手にした
細かい事を考えずに縁を切る。
そういう割り切り方をした方が
いいのかもしれない。
まだ、そういう考えも残っている。
他にも、見学に来ていた
里親になりたいと
希望している人達と一緒だったが、
そのほとんどは夫婦ばかり。
当然ながら独り身の中年男などは
私ぐらいのものだ。
孤児院の子供達が
一人ずつ紹介される。
この子達の今の心境は
一体どういうものであろうか?
我々の経験て例えるならば、
面接でもしているような気分なのか?
本当に言い方は悪いのだが、
まるで子供達を
品定めをしているようで、
なんだかこちらの方が
罪悪感を感じてしまう……。
−
次々と紹介される子供達の中でも、
一際存在感があって
とにかく目立つ子がいた。
キラキラとした金色の髪を揺らせ、
虹彩の薄い碧眼、
堀の深い顔立ちをした美しい女の子。
まだ七歳と幼いのに、
もうすでに完成されているかのような美形。
「…………。」
だが、その瞳は力強く、
まるで野獣のようなギラギラした目で
こちらを睨みつけているかのようだ。
ただ、
自分の色眼鏡のせいなのかもしれないが、
ちょっと痩せ過ぎているように見えて、
ここでの生活に
苦労しているのではないかと、
そんな心配をしてしまう。
天使や女神にも見えるが、
その眼差しが強烈過ぎて、
美しい野生の狼というのが
彼女に対する第一印象だった。
…………
こう言ってはなんだが、
こういう子は人気がありそうだから
すぐにでもいい里親が見つかるだろう
まぁ、私は
純和風の坊ちゃんを探しているのだから、
関係ないかな……。
−
「難しいものだな……」
私は孤児院から帰ることにした。
やはり私には無理だ……
どうしても子供を一人だけ
選ぶということが出来ない……。
ものすごく優柔不断で
決断力が無いタイプでもあるのだ、私は。
お金はこの孤児院に寄付しよう……
それでこの件はもういいじゃないか……。
そう思いながら
孤児院の門を出ようとすると、
不意に声を掛けられる。
「あの、ちょっといいですか?」
赤い髪をした見た目が
外国人のような美しい女性。
大柄で自分よりも差が高い。
「お願いがあるのですが……」
どうした?
外国人観光客が道にでも迷ったのか?
「私と結婚してくださいっ!!」
なっ!? はぁ??
…………
ど、どういうことだ?
こんな見ず知らずの美人に
いきなり結婚を申し込まれるような
覚えはまったくないぞ……
そ、そうか、これが
六億円の呪いか……
どこでどう聞きつけたかは知らないが、
私が大金を手にしたことを知って
早速、遺産相続目当ての
刺客が現れたに違いない……
宝くじに高額当選した人には、
見ず知らずの親類縁者が次々と現れ
寄付をして欲しいと
いろんな団体が押し掛ける
たかりやゆすりなどの
脅迫が後を絶たないという
都市伝説のような話は
本当だったのだな……
それともアレか?
不法滞在がバレて捕まると
強制送還されてしまうから、
偽装結婚するみたいな
バブル時代によくあったアレか?
「どうか、どうか、
ファニー様を助けてくださいっ!!」
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