養子と家政婦

「養子かぁ……」


昔、私が幼かった頃、

おばあちゃんが言っていたことを思い出す。


「あんたねぇ、

犬猫の子供じゃないんだから、

そんなにぽんぽん

子供ばっかりつくってるんじゃあないよ」


おばあちゃんが、

今で言うところのヤンママに相当する

近所の若い奥さんに

説教していた時の言葉だ。


少子高齢化の現在、

そんなぽんぽん

子供を生んでくれる女性が居たら、

今であればどれ程

国から感謝されることか。


いや、別に

女性に対して物申したいとか、

そういうことではなくて……


今の時代、どちらにしても

こういう話はセンシティブなので

触れる人もいなくなったものだ……



肝心なのはそこではない。


犬猫を育てるのと違って、

子供を育てるのは

それ程大変なのだという話だ。


まぁ、犬猫も大変なのであろうが。


自分の身の回りのことで

精一杯のこの私が

子供の面倒なんて見られる筈がない、

そういう話なのだ。


まず子供を育てたことも無いのだから、

何をどうしたらいいのかすら

まったく未知の領域だ。


まぁ、お手伝いさんでも雇って

面倒を見てもらうのなら

話は別だろうが……


…………


もしかして……


お手伝いさん、

もとい家政婦さん?


雇えるのでは?


六億円あるんだし……


ちょっと待て、よく考えよう


どこかで

サラリーマンの生涯年収は

三億円だと聞いたことがある。


であれば、

それは家族を養って

子供を育てて行くのに

それぐらいのお金が

必要だということだろう。


養子一人が

社会に出て働くまでの養育費と、


その面倒を見てくれる

家政婦さんの賃金、


プラス私一人の

後二十年ぐらいの生活費、


すべて六億円で賄えるのでは?


…………。


-


もし仮に、

養子を迎えるとしたら……


そこはやはり男の子しか

有り得ないだろう


よく考えても見よう


妻に先立たれて

独り身である中年のおっさんが


十歳前後の幼女を養子にして

二人で暮らしはじめました……


……これはもう、

犯罪の匂いしかしないな


ご近所からも何と言われるか

分かったものではない


ロリコンではないのか? とか


夜な夜な幼女に

いたずらしてるんじゃないか? とか


その為に養子にしたんじゃないか? とか


下手をしたら通報されて

事案になってしまうではないか……。



私だって近所にそんな人が居たら、

ご近所でそんな噂が流れていたら


そういう目で見てしまうだろうし

そういう人だと思って

ちょっと警戒してしまうだろう。


そう考えると

養子は男の子しか有り得ないな。


そうか、義理ではあるが

息子になるのか……。


まぁ、それも悪くはないだろう。



家政婦さんも同様のことが言えるか。


下手に、若くて美人の家政婦さんを

雇ってしまうものなら、


ご近所さんからは

やれ愛人だの、内縁の妻だの、

何を言われるか分かったものではない。



もし幼女と美人家政婦がセットだったら

それはもう、目も当てられないことになるな。


両方に変なことしてる

性欲お化けの野獣だ!とか


家政婦が愛人で、幼女は連れ子だ!とか


根も葉も無い噂を広められかねない。


近所の主婦というのは

どうしてもそうしたワイドショー風に

話を盛りたがるものだからな。



そうだな、どう見ても

そんな間違いはおきなさそうな……


品が良い感じの

おばあさんみたいな家政婦さんがよいな。


婆やのような家政婦さんが

養子の息子を面倒見てくれて

「坊ちゃん」などと呼ぶのか……


まぁ、それも悪くはないだろうな。


ちょっと

真剣に考えてみても

いいかもしれないな……。



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