第6話「理由」

レオン:そういえば、アコさんが銃士になった理由は?


GM:それ聞いちゃいます?


バジル:それは俺から聞こう。そう言えば、アコさんはどうして銃士隊に来たんだい? お父さんの言うように赤枝の騎士団じゃなくてさ。


GM:アコさんは突然の質問にちょっとびっくりした様子でしたが、話してくれます。



「そうですね。皆さんにこんなに親身になってくれたんですから、お話しないといけませんね。そろそろ昼食の時間ですし、食堂へ行きましょうか。」


 食堂を借りて、ベルモン家のコック特製のサンドウィッチを摘まみながら、アコさんが自分の過去を語り始める。


「私はグレース……、グレース副官にスカウトされて銃士隊に来たんですよ。私の夢はエルーランで防疫部隊を立ち上げて伝染病の被害を食い止める事なんです。グレース副官は『銃士隊ならそれを叶えられる。貴方の夢を預けて欲しい』って言ってくれました。私はその熱意に感動して銃士隊に入る事にしたんです」



バジル:……伝染病で誰か大切な人を亡くしたりしたのか?


GM:「これはグレース副官にしか話してないんですけど。私の故郷はルネスの街で、昔はやった伝染病で本当の両親を失いました。実の父と今の父は親友同士で、ベルモン家に引き取られてログレスにやってきましたけど、伝染病はそれは酷いものでした。体力の無い子供やお年寄りから動かなくなっていくんです。私はその時、震えてる事しか出来なかった。

 それで思ったんです。私は病気に勝ちたい。伝染病なんかで人間の幸せは壊せないって証明して、あの時震えていただけの自分を否定したい。それがアコライトになったきっかけなんです。バジルさんもあるんでしょう? 銃士になったきっかけ」


バジル:まあな。実は俺は……ちょっと台詞考えてからでいいですか?(笑)


レオン:じゃあいいや。半分気を利かせてという意味もあるんだが、私とレイは一旦フェードアウトします。この家の事はアコさんと小隊長に任せます。こっちはジョエルの仲間と言うのを当たってみましょう。


バジル:レオン、レイ。二人に任せる。俺は俺でこの家を探ってみる。と言いつつ内心レオンには感謝を。



◆◆◆◆◆



GM:では雅清君が台詞を考えている間に、レオンとレイを処理しましょう。何処に行きます?


レオン:ジョエルの顔は憶えたし、エルマンのところへ行って月光通りかな?


GM:では、エルマンが二人を出迎えます。「お、今日はバジルの奴は居ないのか?」


レオン:隊長はちょっと野暮用でね。


GM:(小指を立てて)「これか?」


レオン:まあ、その辺りはご想像にお任せしますよ(笑)


GM:「それで、今日はまた俺の手を借りたいのか?」


レオン:有り体に言えばそうなりますかね。名前は伏せて、さるいいところのお坊ちゃんがギルドを組んで冒険者まがいの事をやっているらしいと切り出します。


GM:「ほう……」


レオン:その子の家では悪い仲間としてしか見なされていないが、それが「ただの悪友」か「本当に悪い輩」なのかはまだ分からない。ただ、その少年の年齢を考えるに本当の冒険者と言うレベルにはまだ達していない筈だ。それだったらむしろ冒険者通りへ行くより貴方に聞いたほうがいいと思いました。


GM:なるほど。ただエルマンは冒険者に関しては門外漢ですので調べるには少し時間が掛かります。「で、いつもの事だが、その件に俺が関わるメリットは?」


レオン:そうですね。立場上その「いいところ」を紹介することは出来ませんが、この件が上手くいけば、そちらとパイプが持てますので、得られた情報を提供できるかも知れません。


GM:「ふむ、それだとちょっとばかり不確実だな」


レオン:ええ、ただ今回は噂話を集めるだけですので、前回よりずっと難易度の低い調査でしょう?


GM:「しっかりしてやがる。分かった。その代わり、調査する部下への小遣い代くらいは払ってくれよ?」


レオン:それは構いません。ついでにおまけ情報として盗難事件の話をしよう。調べていてもしこちらの情報に引っかかったら、礼金はその分上乗せします。


GM:「ふん、なるほどな。そういう事なら了解だ」


レオン:その「悪友達」が事件に関わっているのかどうかは今の時点では分からないが、ただ単に悪い交友関係というだけでは貴方のところには来ない。逆に実際に被害が出ているとしたら、これはあなたの領分だ。


GM:「わかった。もう暫くしたら来てくれ。部下を動かしておく」


レオン:情報料も先払いで出しておきましょうか。


GM:「では100Gほど頂こうか」


レオン:ここは150出しておきましょうか。


GM:「おお、流石だね」


レオン:使うべき時に金は惜しむなと言うのが信条でね。


レイ:……はっ、私口を出す余地がまったくありませんでした(笑)。



◆◆◆◆◆



GM:さて、その頃バジルとアコさんは……。


バジル:庭でも散歩しながら話をします。アコさん、初めて会った日を憶えてるかい?


GM:「確か、重傷を負って詰所に担ぎ込まれてきたんでしたよね」


バジル:その前、俺は傭兵団に居たんだ。物心ついた時からそこに居て、親の顔も知らない、孤児だったんだ。……色んなところで色んな事をした。


GM:「今のバジルさんからは想像できませんね」


バジル:まあな、今は毎日を楽しんでるからな。それで、あるときちょっとヘマをして重症を負ってな。死ぬかと思ったよ。


 傭兵団って言っても所詮は他人同士の集まりだったものだから、一人が大怪我をして死のうが誰も気に止めないんだ。もう駄目だと思ったときにアコさんが通りかかって、詰所まで運んでくれなかったら……。過去の話になっちまったな。

 そんなこんなで銃士隊に身を置く事になったわけだけど、最初は一時の宿代わりのつもりだったんだ。でもオーバン隊長とか、銃士隊の皆と会って、俺自身も銃士として、いろんな人に感謝とかされて、まあその分失敗もしたけど、いつの間にか大切なものになっていったんだ。俺はそういう人たちを銃士として守りたいと思うようになったんだ。それが理由かなぁ。まあ、小隊長になっても上手くいかない事が多いけど……。


GM:「バジルさんはとっても頑張っていると思います。知ってますよ。時間を見つけて色々な本を読んでるでしょう? 法律書とか組織の運営とか」


バジル:あはは。結局眠くなって、ちゃんと読んだのが料理本ばっかりになっちゃうんだけどな。


GM:「いいえ、普通はうまくいかないとすぐやめちゃいますけど、バジルさんはちゃんと続けてるじゃないですか」


バジル:そうだと良いけど。あ、そうそう、バジルって名前も実はアコさんとはじめて会ったときに付けたものなんだぜ。


GM:そういえば、あの時出したパスタがバジリコでしたね。


バジル:俺も孤児だから、名前なんて無くってさ。傭兵団でも名前で呼ばれることも無かったしな。だからアコさんが俺の名付け親ってわけだ。そんなアコさんが困ってるんだ。頑張らないとな。


GM:ありがとうございます。私今までバジルさんの事誤解してたのかもしれませんね。


バジル:そ、そうか? それはそれでへこむな。俺も今までアコさんの事分からなかったし。お互い様だよ。


GM:「そうですね」とアコさんがにっこりといつもの笑顔を見せてくれます。「それじゃあ、探索続けましょうか」


バジル:そうだな。きっとジョエルには何か理由があるに違いない。それを必ず見つけ出そう。

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