第4話

「じゃあ、めぐみ行こうか」

「どこへ?」

「あなたが、会いたい人の所」


私が会いたい人は、お兄ちゃんしかいない。

でも、そうなると幼い頃の私もいることになる。


タイムパラドックスとかには、ならないのかな?


「めぐみ、男はちいさい事にこだわらないの」

「私は、女よ。かわいい女子高生」

「自分で言わないの」


何だか、昔からの友達みたいだ。


「ほら。めぐみ。あそこ」

バルが合図した方を見る。


そこには、あのお兄ちゃんがいた。

小さい頃の私もいる。

変わらないな・・・お兄ちゃん。


「めぐみ、ここは過去だよ」

「わかってる」


感傷にひたっても、いいじゃない。


私は、そっと近づいて行った。

楽しそうにお話している。


「バル、正確な月日と時間は、わかる?」

「うん。○○年10月5日の午後3時だよ」

「そう・・・」


この日は確か、お父さんが迎えに来たんだ。

そして、お兄ちゃんとサヨナラした日。


この日以来、お兄ちゃんには会っていない。


お父さんが、小さい私を迎えに来た。

既にお母さんはいなかったので、父子ふたりで暮らしていた。


まさか、この時はお兄ちゃんんとサヨナラするなんて、思わなかった。


「めぐみ、行くよ」

「どこへ?」

「決まってるじゃない。お兄ちゃんのところよ」


足がひとりでに、歩きだした。

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