理屈じゃないんだ
テーブルに一人、ため息をつく。
味噌汁が冷えるのを待つ間、
今日の別れに思いを馳せた。
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貴方は愚か物だと、まっすぐに言われた。
貴方は空っぽだと。
私は貴方から目を逸らさずに、ただ肯定した。
言い訳はしない。
貴方が、過程など無意味で
結果が全てを物語っていると言うから。
どこからすれ違っていたのか今となっては
思い出せない。
記憶の中の貴方は、優しかった気がする、
不器用で不恰好な心遣いが嬉しかった気がする。
きっと小さなすれ違いが積もり積もって、
いつの間にか私は貴方を信じられなくなった。
貴方に追い縋ることをやめてしまった時点で、もう手遅れだったのだろう。
ただただ心も身体も疲れ果て、
期待を無くした今の私に最早、心配しているという貴方の言葉は響かなかった。
貴方は私に、期待を裏切られたと言い、
そこで初めて期待されていたことに気づく。
貴方は私を責めるから、
私はごめんなさいとしか言えなくなる。
星の数ほどの人の中から貴方に出会い、ただ目指す先が異なってしまっただけだと、
ただそれだけの話だと思った。
だから、さよならを言って前を向うと。
貴方はそれを許さず、ただただ私を責めた。
最後まで貴方は、どうしてそんな愚かな選択をしたか分からないと嘆く。
それは理屈じゃないんだ。
貴方は貴方で、私は私だから。
楽しかった、貴方と出会えて良かった。
だけど、ありがとうはきっと届かない。
だから。
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乾杯、
空のグラスを一人掲げる。
今日は、貴方と別れた日。
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