婚約破棄!?前世知識で受けてたちますわ!

@amehurasi123

第1話 乙ゲーの世界に転生しました。

___目を開くと知らない天井が写っている。


そんなこと小説の中だけと思っていたごく平凡な私だけれども、現実に今、私は全く知らないベッドに横になっているようです。



目を開けてゆっくりと部屋を見渡す。

見たこともない、豪華な作りの部屋が目の前に広がっている。

しかし、どこかもの寂しい雰囲気を纏う空気に押され、私はまた目を瞑った。




私、結城 ななさはデザイン系の仕事に務める26歳OL。

実は会社がなかなかのブラック企業で、只今三徹した後です。

私には家に帰れる時に楽しみにしていることがあって、それは最近人気の乙女ゲーム『星降る夜に君と…』をプレイすることだ。

このゲームは1回クリアするとそれまでになかったルートが出現したりしてかなりやり込み甲斐があって、キャラもみんなイケメンばっかだし、私は二次創作イラストを描くくらい『 星降る夜に君と…』にハマっていた。

だから、とりあえず早く家に帰りたい。

ここがどこかは分からないけれど、呼んだら誰か来てくれるよね。


「あの……すみません!!!誰かいませんか?」

「は……はいっ!」

そういうと一人の女の子が入ってきた。

メイドさんっぽい服…ここは病院じゃないの?

てっきり自分は寝不足で倒れたと思っていたのだがそれは違ったらしい。

女の子は日本人ぽくないマロン色の髪で瞳も綺麗な緑色だ。

しかしその瞳には光がなく、終始オドオドしていて落ち着かない。

「ど…どうされましたか…?」

女の子の方から口火を切ってきてくれた。

私はハッとしてできるだけ丁寧に言う。

「すみません……ここはどこですか?貴方は?」

私がそう言うと女の子は驚いてベッドの方に駆け寄ってきて私の手をとる。

「アメリアお嬢様!?あぁ…やっぱり…頭をお打ちになってしまったせいで…。」

今、聞き捨てならぬことを聞いたような。

「私が…アメリアぁぁあーーー!?」


アメリア・イスファハルド___『 星降る夜に君と…』に出てくる当て馬公爵令嬢。

美しい銀髪と突き刺すような緋色の目が特徴の女の子。

その容姿は抜きん出ているものの性格があまりに悪すぎるために舞台となる学園では『女帝 』と言われている。

元々はテオルド・アンディゴール第2王子の婚約者だったけど、この物語の主人公が突然現れ王子が彼女に惹かれていくので嫉妬したアメリアは主人公を虐める。

それで現王妃の誕生日パーティーで断罪されて婚約破棄。

王子は無事に主人公とハッピーエンドを迎える。


…っていう悪役令嬢ポジションなんだよね、アメリアって。

で………私がなんでアメリア・イスファハルドなの!?

多分これは俗に言う『 異世界転生』なんだと思うんだけど、せめて主人公にさせてくれてもよかったのでは!!!

いや、待てよ。

こんなことありえない…そうよ、これは夢だァァ!


私はすぐに手の甲をきつく抓った。

「…ッつ!なんで!?」

抓ったところがしっかりとヒリヒリする。

てことは……夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁあ!!!!


「おおお嬢様!何をされて!?」

「あ、ごめんなさい、少しパニックになってしまったの…オホホ…。」

少し所では無いですけども!!

私は気を取り直して女の子に尋ねる。

「貴方の…お名前は?」


「ルアです…。」

女の子は少し間を開けて言った。

「ルアちゃん……可愛い名前ね!私、色々と忘れちゃったみたい…。だから、よろしく頼みます。」

ルアちゃんは一瞬嬉しそうな顔をしたけれどもすぐに小動物のようにビクビクし始めた。

もしやアメリアったら、家でも暴君なの?

どうしようもない天性の悪女だ……今や自分のことだけど。


ルアちゃんが部屋から出て行ったあと私は一人これからのことについて考え始めた。


テオルドは別に推しじゃないから、このまま悪役令嬢として生きて断罪されて婚約破棄されるくらいならいいけど…もし何かの間違いで処刑とかになったら……そんなのは絶対に嫌だ。

何とかして生き延びなきゃ。



一応言っておくと私の推しはラインハルト・アンディゴール第1王子。

群を抜いてのイケメンで主人公にしか笑顔を見せない硬派な人なのです!

テオルド王子はグイグイくるタイプだけど、ラインハルト王子は心の中では独り占めしたいと思いながらも表では『 好きなようにすればいい。』みたいにちょっと大人な感じがして……あぁぁ、萌え要素しかない。

まぁ、そういうことなんだけど今の私はアメリア・イスファハルド。

公式設定によればラインハルト王子は幼少期からアメリアの事が大嫌いでいつも目の敵にしてるんだとか。

はぁ…多分もう私には表立った推し活はできないだろうな……トホホホホ…。





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