自由なシスター
ということで、やってきました、教会です。
司祭さんの話を聞くに、私のするお仕事は全くないみたい。適当にお散歩したり、祈りをしたり、もう自由にしてください、という感じだった。
それと、この都市ワイルダンの説明も軽くだけどしてもらった。
ルーメリアちゃんのお父さんの言う旅人が最初に訪れる場所になっていて、都市の周りにいる魔物もそこまで強くないとか。
様々な施設が揃っていて、けれどその質は中の下くらい。
なんだろう、この始まりの町感。
あと、旅人だけど、複数系らしくて、色々とすごいらしい。
なにが凄いのかと言えば、まず強い。正確に言えば、成長速度が早い。武を極めようとする旅人は強く、鍛冶を極めようとする旅人は巧く? なんでも、何をしても才能があるのだとか。
それに加えて、旅人は死なないらしい。死んでも生き返るって言ってた。
生き返ったあとは少し弱体化するらしいけど、生き返る時点ですごい。ゾンビかな?
それでさっきも言ったけど、その旅人が最初に現れるのがこの都市なんだとか。
始まりの町感がすごすぎる。最初にくるならここが一番だもんね。
私が目を覚ましてから受けた説明はこんなもの。寝ていたのは教会の2階みたいで、下がなにか騒がしい気がする。
なにかあったのかな? と思って、用意されてたシスターっぽい服に着替えておく。
シスターっぽい服は、白と黒を基調としたシンプルなつくりで、簡単に言うと、でっかいロングコートの下に長袖とスカートを着ている気分。いや、言ってて微妙に、結構、ほぼ違う気がするけど、たぶんそんな感じ。
帽子っぽいものは無いらしい。まあ、ちゃんとしたシスターじゃないから、そういうのもちゃんと用意されてる訳じゃないか。
部屋を出て、騒がしい一階にいくと、司祭さんと鎧? みたいなものを着た男性が話していた。
男性は、いかにも戦士です! っていう感じがする。というか剣を腰にさしてる。
それ以外だと、腰にポーチをつけていたり、髪の色が赤色だったり。
変な色。
「司祭さん、どうしたの?」
降りてきても気づかれなかったので、普通に声をかけることに。
「ああ、ルナさん。道を聞かれましてね。……はい、こちらに描いておきましたので、迷うことはないでしょう」
そう言いながら、紙のようなものを戦士くんに渡す。
「なるほど。えっと、私はワイルダンを散策しにいきますね」
「わかりました。遅くなりすぎないように気を付けてくださいね」
「はーい」
司祭様を司祭様って呼んだのは、なんとなく。それと、司祭様に対してだとなんでか、コミュ症が発動しない。ちょっと嬉しい。
戦士くんはなんでか固まってるけど、気にせず横を通りすぎて教会の外に出る。
すれ違うときに、戦士くんの左腕にブレスレットが付いてるのを見た。
旅人か。
まあ、だからなんだって話なんだけども。
それよりも、まだ見ぬお店が待っているかもしれない。残念なことにお金は無いけど、都市ワイルダンには図書館があると聞いた。
娯楽のない私には本が必要なんです。……誰か娯楽の提供をお願いします……っ!
司祭様が話してた通りに歩いていく。あ、あの屋台の食べ物美味しそう。……あ、あのお店の武器、かっこいい。……あ、色んな洋服が売ってる。
つい目を奪われ過ぎた。見るものすべてが、引きこもりだった私には光輝いて見える。
って、あれ? 図書館どこだっけ……
もう、誰なのかな、道草を食べに食べたあげくに道がわからなくなる人は。
仕方ないので、近くの人に聞いてみようと周りを見て……あきらめた。
コミュ症の私には難易度が高すぎる……。
「シスターさん、どうしたの?」
「ひうっ」
び、びっくりしたあぁ、急に話しかけないでよ……ええと、誰ですか?
「な、なに?」
なんとか言葉を捻り出す。よくやった、わたし!
「シスターさんが困ってるように見えたから」
そう言われて、自然と下を見ていた頭を上げる。
黒いコートっぽいものに、魔女っぽい帽子を被る女性がいた。
やばい、救世主かもしれない。あ、ブレスレット付けてる。旅人さんだ。
えっと、とりあえず、助けを求めるべき……いや、さすがに悪いし、場所を聞くだけでなんとか頑張ってみよう……。
「えっと、と……ょ…んに……」
「……うんうん、図書館ね。私も行くところだったから、一緒に行こっか」
「……!! ありがとう」
「いいよいいよ、困ったときはお互い様だよ」
ふぁあ、優しすぎる。それよか、全然上手く話せなかったのに、察してくれるとか、コミュ力つよすぎる。
魔女っぽいお姉さんについて歩くと、数分で図書館についた。
結構近くにあったんだ。良かったぁ。
「あ、用事が出来ちゃったから行くね。またね、シスターさん」
「え、あ……」
そのまま走ってどこかに行ってしまった。
これは……嫌われた? うっ、面倒な子はお嫌いですか……。
傷ついた心を引きずりながら、図書館で数冊本を借りて、教会に戻るのだった。
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