ブレスレット症候群(仮称)

 扉を開けると、白いふかふかの絨毯が敷き詰められた廊下に出た。

 軽く足踏みしても、足音が聞こえない。雲にのっているみたい。


 ……さすがに雲は言い過ぎたかも。体育の授業で使うマット<絨毯<人形<<<雲くらいかな?

 雲にのってみたいなぁ。異世界だし探せばあるかも?


 まあそれは置いておいて。


「広い……」


 うろ覚えの学校の廊下と同じくらい広い。人が三人並んでも通れるんじゃないかな? うーん、かなりのお金持ちとみた。


 扉は等間隔で、結構な距離離れてるみたい。

 まあ、私の部屋が広いんだし、そう考えればこうなるかな?


 廊下には、絵とかつぼが飾られているけど、なんで飾っているのかがわからない。売っちゃえば良いのに。


 見た感じ私の部屋は一番奥にあるから、迷子になって戻れない~、なんていうこともなさそう。

 ふかふかの絨毯を歩きながら、面白そうな絵がないか見て進む。


 描かれているものは、草原だったり、お花畑だったり、湖だったり、大きい山だったりと、景色が多い気がする。


 ふと目にとまったのが、白い翼の生えた少女の絵だった。

 風景画が続いてて初めて人(?)がいる絵だった。描かれているのは後ろ姿で、長く綺麗な金髪と、白い翼、あとはファンタジーなお洋服を着ている。

 その人の目の前は黒で塗りつぶされていて、なにがあるのかわからない。


 なんだろ、すごい気がする。いや、語彙力ないから伝えられないんだけども。


 ぼーっとその絵を見ていると、声がかけられた。


 メイドさんにお風呂入ってねってというような事を言われた。

 そんなに絵を見てたのかな?


 お風呂の場所も分からなかったので、メイドさんに着いていき、お風呂に入ることにした。


 お風呂に行くときと帰るとき、あの人の絵以外、全部風景画だったのが不思議だった。



「お嬢様、朝ですよ」


 軽く肩を揺らされる感覚とともに、目が覚めた。


「明日から、礼儀作法の先生と、魔術師の先生をお呼びします。お二人のお名前と授業内容は、そちらの紙に書かれているので、目を通しておいてください。それでは、朝ごはんをお持ちします」

「はい……ふぁ……」


 う、あくびをかみ殺しきれなかった……。

 おはようございます、転生二日目です。寝て覚めても状況は変わらなかったし、やっぱり夢じゃないんだよねー、あはは。


 ……ステータスもまだあるし、いつも付けてるブレスレットも……あれ?

 ブレスレットがない。え? 無くしたっけ、いや、持ってたはず。

 んー、着替えたときに落ちたとかかな? いやでも、ブレスレット自体は前世のときのものだったし、もとから無かったとかかな……。

 ひいおばあちゃんに貰ったもので、小さい頃からずうっと腕に嵌めてたんだけどなぁ。


 あーでも、思い返してみれば、今世では最初から無かった気もする……。

 うーん、残念。

 思い出すと、左腕のあたりが、いつもと違う感じでむずむずというか、なんかすごい気になる……なにか代わりになるものとか無いかな……ないかぁ。


 代わりが見つかるまでは、右手で包んでおこうかな……。

 ん? はたから見ると、完全に変な人に見える……? いやでも、この気になるものは気になるし、でもここは我慢かなぁ。

 タオルケット症候群ってこんな感じなのかな。私の場合だとブレスレット症候群?

 うー、我慢、がまん……


 あ、朝ごはん持ってきてくれた。感謝かんしゃ。

 オムレツかな? 卵料理は好きだし、ここの料理は美味しいからうれしい。


 それにしても、お風呂じゃ無かったんだよ、シャワーみたいな感じだった。メイドさんの説明だと、火と水の魔石を使った魔導具、らしい。お風呂は普及してないというか、そういう文化がないんだとか。

 私のコミュ力を総動員して聞き出せたのはそれだけだった。

 今度機会があったら、お風呂文化のある国に行ってみようかな。


 それと、先生を付けることに成功した。実を言えば、もとから決まっていたみたい。

 あ、メイドさんの名前を聞くの忘れてたなぁ、今度聞けたら聞いてみよ。


 その前に、朝ごはんを食べながら、先生になる人たちの名前を覚えることに。


 オムレツは、やっぱり美味しかったです。

 ケチャップが無かったから、今度作ってみようと心に決めました。

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