暗がりにも楽しみを

 ご飯を食べおわり、両手を合わせてごちそうさまをして、軽く伸びをした。


「ふあぁ……」


 一緒にあくびも出てきた。

 今日だけで、色々なことがあったから疲れたのかもしれない。


 そもそも、ここはどこなんだろ? あ、さっき見たステータスに、[ルーメリア公爵令嬢]ってあったっけ。

 となると、ここは、そのルーメリア公爵が関係する場所……。


 え、ここまで推測できる私天才かもしれない。


 という冗談は置いておいて。


 つまり、私はルーメリア公爵令嬢、ということ? いやでも、前世? で引きこもってた記憶はあるけど、今世での子供の頃の記憶は無いし……。


 私が、乗り移った、とか?


「……」


 本当のルーメリア公爵令嬢は、私が乗り移ったせいで、消えた……。


 私、殺人しちゃったのかな。


 うーん、転生? 乗り移り? そのせいで、ルーメリア公爵令嬢は消えた? いやでも、そうだと言い切れないし、子供の頃の記憶が無いのは、よくあることだけど……でも、さすがに名前くらいは覚えてるはずだし……。


 公爵令嬢がどれくらいすごいのかは分からないけど、それなりの気品? とか、敬語とか、作法とか、知らないし。


 あれ、私、このままやっていけるのかな? 


 記憶喪失のフリをして、1から教えてもらって、それで、私のせいで消しちゃったルーメリア公爵令嬢を探して、出来そうなら、体を返す。


 うん、目標決定。


 ごめんなさい、ルーメリア公爵令嬢ちゃん。あなたのことを見つけて、体を返す方法を得るまで、あなたの体をお借りします。


 本当に、ごめんなさい。


 そうとなれば、まずは……公爵令嬢の振る舞いを、覚えないとかな?

 それと、少しだけ、ほーんの少しだけ、この世界を楽しませてください。


 だって、非日常ってわくわくするから。


「あ、お風呂」


 そういえばさっき、メイドさんがお湯の準備が、って言ってたっけ。

 ここの探索も出来るし、お風呂にも入れるなんて、一石二鳥って言うのかな?


 よーし、お家探検、れっつごー!

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