第5話 10月23日(金曜日) 20:20
「はぁ…はぁ…」
どれだけ走っただろうか。
心臓が痛い、頭も痛い、脚も痛い。
一度深呼吸して冷静になってこれからを考える悟。
(実家はきっとすぐに警察が来るだろう、ヨシロウとモエはもってのほかだ…となるとシンゴか美里…)
悟が向かった先はシンゴの家だった。
(あいつならちょうど仕事が終わった頃だろう。それに古くからの付き合いで親友とも呼べる存在だ。あいつしかいない)
向かう途中に川沿いを歩く。
(なんでこんなことになっちまったかな。…やべ!)
悟は慌ててスマホをポケットから取り出した。
スマホの位置情報でバレる!
焦った悟は
「クソッ!」
スマホを暗闇の川に投げ込んだ。
虚しく、ぽちゃん。とだけ音がする。
(あぁ、先月買い替えたばっかなのに…)
自分のスマホを川に投げ込むなんて経験は2度としないであろう。
落ち込んでいると遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
悟の心臓が再び速く脈をうちはじめた。
(急がないと!)
ーーーーーーーーー
大通りより少し外れた緩やかな坂上にある小洒落たカフェ。「ハーベスト」
ここでシンゴが働いている。
ドアの前にはクローズと札がたてており、店内を覗くとお客さんはもう居ない様子だ。
悟は中に入りキッチンで洗い物をしていたシンゴに話しかける。
「シンゴ!」
「うわ!びっくりした。やめろよお前」
笑いながらシンゴは言った。
この様子ならまだ事件のことは知らない様子だ。
「シンゴ、助けてほしい」
あまりにも真剣な悟の顔にシンゴはただ事ではないことを悟った。
それから今日一日のことを全て話した。
シンゴは初めは理解が追いついてない様子だったが次第に飲み込んでくれた。
そしてテレビをつける。
『速報 古石市のアパートで20代女性が殺害。容疑者と思われる男が現在逃走中』
テレビには先程のアパートが映っており、悟の心臓を締め付ける。
「まじじゃん…わかった!俺はお前の味方だ。だけどすぐここにも警察が事情を聞きに来るだろう。とりあえずこれ着ろ。」
シンゴは着替えを渡してくれた。
「一応仕事用の携帯とで2台もってんだ、知らんとこから電話が来ると思うが無視してくれ。あと少ないけどないよりマシだろ。」
携帯と2万円もくれた。
「シンゴ…まじでありがとう。」
「俺が逆の立場になったら助けてくれよ?(笑)」
「ないだろそんなこと。」
久々に笑った気がする。
そんなことも束の間、サイレンの音がする。
2人は途端に黙る。
…
…
次第に近づいてくる。
「悟!逃げろ!」
「わ、わかった!」
速攻で着替え走る。
目指す場所も決まらないまま…
激走 氷菓子 @HYO_GASHI
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