2人目、男

 親友のことが、大切だった。


 女々しいと、自分でも、思う。


 遅れてくる、思春期の木枯らしなのか。成人してから急に不安定になりはじめた彼を、自分の家に住まわせた。


 自分の思春期のときは、かなり世話になっている。社会に、構造や組織に、どうしても馴染めなかった自分の隣に。彼はいてくれた。彼のおかげで、俺は思春期を抜けて。今ここにいる。


 街の中に紛れ、わるい奴を人知れず処理する、仕事。誰にも明かせない特殊な職だが、給金は素晴らしく良かった。


 周りには、遊び人ということで通していた。数日家にいなくても、どこかで遊びほうけているという理屈が通る。その間にも、街を平和にするために、闇に紛れてわるい奴を倒す。


 親友に、少しでも、いい暮らしをさせてやりたい。親友に。不安定な彼に、寄り添ってやりたい。


「まるで、貢ぐ女だな」


 仕事とは裏腹に。親友のことを大事にして、好きでいる、自分がいる。


 女がいた。ふたり。


 会うべきでは、ないのだろう。どちらも、親友と関係を持っている。親友のことを考えるなら、自分は一歩引いて、遠くで見ているべきだ。見ている、べきなのに。


 こうやって女と逢って、身体を委ねる自分がいる。


 愚かだった。どこまでも。親友のことが大切だと言いながら、親友と関係を持った女と、しかも二人両方と、逢っている。


 彼に、会いたいな。


 電話。

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