すれ違う四人、いない五人目

春嵐

1人目、男

 好きな女が、ふたりいた。


 どちらにも、絞れていない自分がいる。


 それとは別に、一番多く時間を過ごしたのは、親友。親友は、男だった。


 親友と付き合えたらいいのに。心は、彼を求めている。それでも、身体は女を求めた。


 この不安定さが、どうしようもなく、心を乱した。


「はあ」


 ひとりの部屋。


 親友のかねで暮らしている。代わりに、家事はすべて、自分の担当。


 家のことをやるのが、好きだった。ごはんを作って。洗濯をして。掃除をして。


 満たされない気分を、少しでも、満たしていく。家事をしている間は、自分が何者なのか、考えなくて済んだ。どれだけごはんを美味しく作るか。どれだけ効率的に洗濯物を干せるか。どれだけ綺麗にできるか。そういうことで、頭を一杯にしてしまう。


 どうしようもなく、孤独。


「まず、女をふたり好きになるという時点で」


 男としての資格が、ないのかもしれない。


 彼に、会いたい。


 電話。

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