第26話 俺は食事の後、畳の談話室で

 俺は食事の後、畳の談話室で、みんなを待っている。

 雪乃と光希がやってきた。この二人は、新変化球の伝授以来毎日しているので、もはや恥じらいがなくなっている。やはり、患部は直接もんでもらった方がいいと、最近の服装はタンクトップにホットパンツになっている。

 それはそれで、目のやり場に困るし、体に触るにも余計な誤解を受けないよう細心の注意を払わなければならない。

 一応これでも施術師の免許は持っているのだが。

 肩、肘、手首とマッサージした後、今度は、腰、もも、ふくらはぎと体の中心から外へと向かって揉み解していく。やはり、ブルペンと試合のマウンドでは負荷の掛りがだいぶ違うようで、しっかりと筋肉に張りがあり、明日以降支障が出ない様、入念にマッサージを行う。

 そうこうしていると、陽菜と桃と桜が談話室にやってきた。それぞれ、腿やふくらはぎ

に張りと違和感があり、陽菜は、ボールの当たった背中にも痛みがあるというのだ。

「それにしても、なんだお前らの恰好。それブルマか? 」

「どうせ揉んで貰うなら、直接の方が効くやろと思って、監督、こっちの方がやる気出るやろ」

 桃、マッサージに服装は関係ないぞ。でも、この異世界ではブルマはまだ滅んでいなかったのだ。

 まあ、ももやふくらはぎについては、雪乃や光希で慣れているため、内心のドキドキを隠して何事も無いような顔でマッサージを続ける。こいつらちょっと俺をからかっている所もあるからな。


「よし、陽菜、次は背中だ。タンクトップを脱いでくれ」

「ええーそれマジ!」

「マジも何も、脱がないと、ボールの当たっている所の状態が分からない。骨折とかだとさすがに直せないし、打撲程度なら、シップとテーピングで何とかなると思うぞ」

 陽菜がおろおろしだし、桃と桜はケラケラ笑っている。

「仕方ないな。うつ伏せになって、俺がタンクトップをめくるから」

 陽菜はやっと納得して、うつ伏せ寝になった。

 俺は、タンクトップをめくると、肩甲骨の下あたりが赤くなっている。患部を触ってみると少し熱を持っている程度で骨折ではなく打撲であることがわかった。とりあえず、救急箱からシップを取り出し、患部に張り付けると、そこから、腰に向かってテーピングで姿勢の補強をしていく。

 ちらっと見えたブラとパンツについては見なかったことにする。

「あ、監督なんか姿勢が楽になった」

「そうだろう。痛みで姿勢が捻じれると、治りが遅くなるし、庇って後々変な癖がつく場合がある」

「監督そういうこともよく知っているんだ」

「まあ、アメリカに居た時は、テーピングの魔術師と呼ばれたこともあるぞ。アメリカンフットボールで肩を脱臼したやつの肩をはめて、テーピングでぐるぐる巻きにして試合にだしたこともあるんだ。

 周りには、クレージ呼ばわりされたが、結局そのチームが優勝して、そいつが俺のお蔭だって吹くから、おかげで、俺はテーピングの魔術師って呼ばれるようになったんだ」

「「「そうなんだ!!」」」

三人がキラキラした尊敬の眼差しで俺を見ている。

 そうだ、お前たち俺を尊敬しろよ。そう思っていると、桃が「ちょっと待っててや」といって部屋を飛び出し、すぐに、梨沙を連れて戻ってきた。

「監督、梨沙がジャンプした時、足首を痛めたらしくって、あとの守備が苦しそうだった」

「そうなのか。俺は全く気が付かなかった」

 やはり、観察力が女の子は高い。まったく俺は気づいていなかった。

 すぐに患部を見てやり、テーピングで筋肉や筋を補強する。

「よし、ちょっとひねっただけだ。もう、動いてもあまり痛みを感じないと思うがどうだ?」

「うん、監督すごく楽になった。びくびく動かなくても大丈夫だ」

「今度からは傷めたと思ったらすぐに言ってくれ。試合中でも、治療時間は取ることができるから」

「「「「「「はい!」」」」」」

  今日の施術は大盛況だった。


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