第21話 さて、飯を食った後は
さて、飯を食った後は、俺は特にショッピングモールですることが無い。
バスの集合時間まで、約二時間、本屋で野球関係の本を立ち読み、その後、スポーツショップでもぶらぶらするか。
部長の木庭さんはスポーツクラブで一汗流してくるらしい。
そういう訳で、本屋で野球関係の本の立ち読みをするが、やはりこの時代まだまだ根性論が先行してることが良くわかった。それに、高校野球の今の流行は、筋トレであることも。そうか、金属バットの特性を生かした、上半身強化メニューが主なのか。
ピッチャー編を見てみると、主な変化球は、カーブとシュートあとスライダーとフォーク、そうか、手元での小さい変化はまだまだあまり認識されていないのか。
戦術論の本はまったく見合当たらない。やはり、個々の力を鍛えることがメインのようだ。
今度は、漫画コーナにいく。やはり漫画もピッチャーが主人公でライバルのバッターとの一騎打ちがメインで、努力と根性のスポ根ものが主流になっている。
この異世界、俺のいた世界より三〇年は野球理論においては遅れている。
ここで、ステータスによるデータ野球を駆使すれば、そこそこは群雄割拠から抜け出すことは可能だ。
しかし、あの転生者だけは別だ。データを超えたところにいる。打者なら全打席敬遠なんだが、投手だとそうもいかない。打てるイメージが湧かない。こうなると、こちらも点をやれない。そろそろ新しい変化球を教えなければならないか?
それにしても、そろそろ強豪、甲子園常連組と練習試合がしたい。しかし、手の内を見せるわけにはいかないので、県外の強豪校が理想だ。
そんなことを考えながら、今度は、スポーツショップを覗く。まずはスパイクだ。
やはり、三点でグリップするタイプしかない。バットも金属バットはアルミ製が主か。
ここ十年で一番種類が増えたのはグローブのウエブか、この売り場、ウエブのパターンは数種類しかなく、バスケットタイプのウエブが主流だ。懐かしい。オールランダー用で、初心者には一番使われるな。うちのチームの初心者もみんなこのタイプだ。
しかも、この世界、投手以外はカラーも自由だ。でも、みんな特に凝ることもなく普通に単色で、イエローかローズカラーで女の子らしい。
野球部のみんながスポーツショップにだんだん集まってくる。やはり、野球道具が気になるんだ。グローブやバットやスパイクを見ている。
グローブについては、俺がそれぞれのタイプに合わせて型付けしている。女の子は握力が弱いからね。バットのグリップテープも特注でグリップ力を上げている。たぶん、前の世界だと使用禁止だろう。
そうだ、スパイクの金具のパターンについて、出入りの業者に相談しよう。
すぐに、つま先重心タイプのパターンとかかと重心タイプのパターンを前の世界のパターンを参考に、力がロスなく伝わるパターンをスポーツメーカーの担当者と相談して開発した。のちにこの金具のパターンが爆発的に売れた。そして、この世界のスパイクが技術的に進化を遂げたのだ。
「しまった。特許を取っておけばよかった」は後の祭りだった。
しかし、その見返りにスポーツメーカーの計らいで、甲子園常連校との練習試合を組んでもらえることになったのだ。
練習試合から、天翔女子学園に戻ってきた。
今日のミーティングはどうする。まさか、光希の胸のおかげで楽勝だったとはみんなに言えない。そういうわけで、みんながなすべき仕事がキチンとできたので今日の試合結果になったと言っておいた。
ミーティングが終わったあと、光希が肩と腰の張りを俺に訴えてきた。
「そうか、コールドとは言え初めての完投だしな。光希、それなら俺がマッサージをしてやろうか?」
「監督、変なところ触らない?」
「あたりまえだ。俺は、アメリカ留学時代は、トレーナーとして、男女問わず誰にでもやっていたし、好評だったんだぞ」
木庭さんも頷いている。そうか、俺のこの異世界での記憶では、木庭さんのトレーナーとしても活動していたのだ。
そういうわけで、光希の肩、肘、腰、もも、ふくらはぎとマッサージをする。
少し張りがあるがたいしたことはないだろう。それより、やはりこの筋肉、しなやかで均一に発達している。関節の稼働域も広く柔軟である。確か俺がアメリカで留学時代担当していた大学生、野球の女神が将来大リーグのレジェンドになると言っていたが、あいつと比べても、ゴムと粘土ぐらいの違いがある。
まあ、多少、光希の張った胸や、うつむせで潰れた胸に視線が行ったが誰にも気づかれていないはずだ。
合わせて、雪乃のマッサージをしてやる。雪乃も特に抵抗がなくマッサージをさせてくれる。やはり、金メダリストの一言が聞いているのだろう。
雪乃も光希と同じく、俺がトレーナーをしていた選手の中でも一、二番を争う良質な筋肉をもっていた。この筋肉の張りがテストステロンZのおかげなのか?このホルモンが何者なのか一度、じっくり研究する必要性を考えている。
二人とも、気持ちよさそうにしていて、旨い具合に筋肉の緊張が取れている。
これなら、新しい筋肉の動きをさせても大丈夫だ。
「二人とも、明日から新しい変化球の練習に入るぞ。それからみんなも、これからの練習試合は強豪校と組んでいきたいと思う。バスターでの練習は終わりにして、マシンで一四〇キロのストレートがしっかり打てるようにしていこう。みんなバスターで一四〇キロのタイミングはしっかり取れるようになってきたからな」
「はい」 みんなから元気のいい返事が返ってきた。
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