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未結式

風刺小説

「人間はあらゆる抑圧から解放されるべきなんだ」

「どうした急に」

 二限が休講になり、暇となった俺は友人の家でゲームをしていた。その友人が対戦中に哲学的なことを言ってきた。

「世の中にはいろいろな縛りがある、見えない枷が無数にある、仕事や学校での人間関係に優しくない社会システム、そんな数多の束縛や苦しみから人は解放され自由になるべきなんだ」

「なるほど、分からん」

 男の俺でも二度見するほどの美形なのにこんな小難しいことを言っているから、浮いた話の一つも出ないのだろう。

 彼の話を流しながら、その隙にこちらは画面内で彼を追い詰めていく、そして壁際に追い詰めた、さあ止めだ。

――ならば私が新しい未来を切り開こう!

 しかし最後の一瞬で彼の操作キャラクターが光り輝く、覚醒である。

目にもとまらぬ速さで俺にコンボを叩き込み、一瞬にして撃墜する。俺の画面に出る赤文字の「LOSE」。

「甘かったね」

 横を見るとどや顔の彼がいた。

「くそおー」

「全ての抑圧から解放された僕に死角はないよ」

「ふふふ、なら俺も本気を出そう」

 そう言って硬い革ジャンを脱ぐ。正直この暖房の聞きすぎている部屋では下のデニムも脱ぎたいところだが、さすがにそれは憚られる。

「第二ラウンドの開始だぜ!」

 再び対戦を開始する、やはり彼の方が上手い、巧みな動きでこちらを翻弄してくる。

「へっくし」

「風邪か?」

「平気だよ、いつものことだから」

「それはまずいだろ」

 くしゃみをしたことで隙が生まれた、その間に攻撃を叩きこむ。しかし――。

「甘いよ」

 彼はもう一度覚醒し、コンボを叩きこんで再び勝利。

「また負けたー」

「言っただろうこの身を覆う抑圧という名のヴェールから解放された、僕に負けはないって」

 確かに色々解放されていそうである、彼の姿を見て何となく納得してしまった。

「おっと、そろそろ時間か」

「ああ、バイトの時間だったね」

「なんか急に押しかけて悪かったな」

「いいよ、いいよ」

 帰り支度をして、限界の方に向かう。

「なあ、最後に聞きたいことがあるんだ」

「ん、なんだい?」

 正直これは一番最初に聞きたかったことだった、なんとなく触れてはいけないのかとスルーしたのだが、意を決して聞く。























「なんでずっと全裸なの?」
















 全裸小説




 これはシュレーディンガーの猫をモチーフにした作品です。


――噓です。

 この小説を通して私が言いたいことは「登場人物の服の描写がない場合、登場人物が全裸である可能性を疑え」ということです。憧れの学園のマドンナは全裸かもしれない、主人公をカツアゲする不良は全裸かもしれないし、父親の敵は全裸かもしれないし、もしかしたら貴方たちの目となる主人公も全裸かもしれないという屁理屈を思いついたので勢いで書いてしまっただけです。

 もしこれから貴方が小説を読んでいるときに、「あ、こいつ全裸かも」と思ったら私の勝ちです。

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??? 未結式 @shikimiyu

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