意外なアクティブ

 今日は帰り道を変えてみよう。ふとそう思った。断じて先輩を見つけたからじゃない。先輩とは下校時間が全然合わない。だから帰りがどんな様子なのか、気にはなったのは確かだけど。

 歩く道が登校する時と違う理由が分かった。物陰からうかがっていると先輩は本屋に入って行く。本が好きなのは知っていた。今何をしているのか聞くと返ってくる答えは2通りで、読書かFPS。それしか来ない。勉強をしてるなんて見栄を張りもしないし。


「あの先輩、本屋に何しに来てんの……?」

 疑問が頭の中を駆け巡る。かれこれもう1時間半は本屋の中をうろついていた。これといった場所に留まって本を探す。という感じではなく、歩き回って眺めるのが目的に一応は見える。

 別に全く立ち止まらないわけじゃない。ちょっと止まって1冊流し読みして戻す。それをまれにするだけだ。しかも手に取るのはライトノベルだけでなく、自己啓発本から少女漫画まで幅広い。女性に混ざって少女漫画を手に取り、裏面をじっくり読んでいた時は私でも流石に少し引いた。


 暫くして先輩は諦めたように肩を落とした。珍しく少し落ち込んでいるように見える。何をかは分からないけど見つからなかったみたい。流石にもう帰るみたいで、先輩は真っ直ぐ出口に向かう。

 しかし途中でその歩みは止まり、顔が横を向いた。その目はたぶん、沢山のプリペイドカードじゃなくてその下に置かれていた小物にいったと思う。誰かにあげる物としては悪くないように思えるから。シンプルなデザインの栞は複数あったのに、先輩は特に可愛いと私が感じたものを購入する。

「あの栞、誰にあげるんだろ……」

 横から見えた表情は少し嬉しそうだった。

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