目の前を歩く人
笹霧
隣町ショッピング
少し跳ねた前髪を撫でる。押さえている間は真っ直ぐなのに、手が離れたそばからまた跳ねた。揺れ動いた拍子に陽光が私の目を照らす。
わ、日差しが眩しっ。慌てて目線を下げるといつも見る背中が歩いていた。後ろ髪は刈り上げていてトゲトゲしている。話かけようか今日も迷っていると、横からあの子が飛び出して来た。
「おっはよ、
「うん。おはよ、
「もちろん! 私が落ち込んでる時なんて、彼に振られた時ぐらいだよ」
「あ、まだ振られてないんだ」
「2人目だもん。今回は慎重にいくぜ」
江奈と笑って登校するいつもの日常。先輩が少し先を歩いているのも日常。
退屈な古典の時間。左隣は教科書を立てて眠っている。先生は全然気にしてなさそうだけど__あ、今何かにチェックを付けたよ。怖い。
スマホが点滅した。教科書の下に隠していたのを取り出す。朝に送っていたメールに、先輩からの返信が来ていた。先生は来てないけど教科書で思わず隠してしまう。1ヶ月ぶりの先輩との予定だ。
半日授業でお昼での下校。私は隣町のショッピングモールに来ていた。1人じゃない。隣には先輩だ。私服に着替えた私達は誰にも分からないだろう。なにせ、先輩は眼鏡を外して私が眼鏡をかけているからだ。
変装をする理由は言わずもがなクラスメイト対策だ。私も先輩も学校で騒がられるのは迷惑だからね。そもそも他の子みたいに付き合ってるわけじゃないし。じゃあ何で2人で来たのかというと、前の母の日のお礼として、父の日のためのプレゼント選びだ。男のことは男に聞くのが一番だと思う。だから別に他意はないよ。
バレないとは思うが、学生が多い。他の学校でも半日授業なんだと思う。先輩は全く気にしないで選ぶのに夢中だ。と思っていたら先程まで居た場所に先輩の姿がない。探してみるとスムージーを2つ持った先輩が私を探していた。目が合ったと思うと何故か私はその視線を避けていた。でも先輩はそれを気にせずに片方を差し出してくる。顔を見ずに受け取ると、無言で飲み始めた。壁を背に横並びでたた飲む時間。サクランボ味は思ったよりもずっと甘かった。
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