第3話 米沢で出会い仙台で相席になった美女
朝8時半、真一は新潟駅から米沢行きの『快速べにばな』に乗車し新潟を後にする。列車はディーゼル気動車の2両編成で、日本海沿いを走っていた列車は山を上っていく。
ローカル線ならではの、のんびりした旅、車窓を眺めながら黄昏る真一だった。
列車は山を下っていく。山を下ると、車窓に米沢の街が見えてきた。
終点の米沢には11時半に到着した。真一は昼食をとるべく、米沢の街を散策していた。
米沢といえば、やはり米沢牛…。真一は米沢牛を堪能すべく、一件の米沢牛専門店に入る。
店に入りメニューを見る。
真一(やはりここは王道のサーロインステーキ300グラムといこう)
なんだかサラリーマンが一人黙々と食事をとるドラマのような雰囲気だった。
真一はサーロインステーキ300グラムの定食を注文し、昼から豪華なランチである。
真一が黙々とサーロインステーキを食す。
真一(肉はしっかりしている。しつこい油ではない。サラッとしていて肉そのものの邪魔をしていない。神戸牛や近江牛とは少し肉質が違うなぁ…。神戸牛・近江牛は柔らか目だが、米沢牛はしっかりした肉やなぁ…)
真一が心の中でウンチクを語っていた。
勘定を済ませると、店の奥さんが『これどうぞ』と、板チョコをおやつにもらった。
真一(板チョコをお駄賃でもらう歳やないけど…(笑))
これも旅の醍醐味である。
真一が次の電車の時間まで米沢の街を散策していると、路地から出会い頭に人とぶつかった。
女「キャッ」
真一「おーっ」
女「すいません」
真一「いえいえ、こちらこそすいません。大丈夫ですか?」
女「大丈夫です。すいません」
真一「いえいえ、失礼しました」
女はそそくさとその場を離れた。
真一もその場を離れた。
次の電車の時間が来たので、真一は米沢駅に戻った。
米沢からは奥羽本線の普通電車で山形へ向かう。この路線は山形新幹線も走っている。
米沢から1時間弱で山形に到着し、山形からは
山形から1時間弱で仙台に到着した。
仙台からは都合により東北新幹線に乗る。
乗る新幹線の時間まで少し待ち時間があるので、ここは仙台、牛タンを食さねば…と、牛タンをつまむ。
真一(うーん、タンの歯ごたえ抜群。これはビールがいるなぁ…)
真一は一人で牛タンを堪能し、新幹線に乗った。
真一が利用した当時の東北新幹線は、盛岡までしか通っていなかった。真一は盛岡まで新幹線に乗り、盛岡から青森行きの普通電車に乗り換える予定である。
真一が盛岡行きの東北新幹線に乗車し、待ち時間があった。真一の向かいに座っているおばあちゃんが孫が駄々をこねていて苦慮していたのを見かけた。
真一「よかったら、食べて。少し溶けてるかもしれんけど…」
と、真一は孫に米沢牛のサーロインステーキを食べたときにもらった板チョコを手渡した。
おばあちゃん「すいません、ありがとうございます」
孫は板チョコを真一からもらって駄々をこねるのを止めた。
その後すぐ、真一の隣の席の人がやって来た。
女「すいません」
真一「あ、すいません。あっ❗」
女「あっ…」
真一「先程は米沢で失礼しました」
女「あー、いえいえこちらこそ…」
なんと真一の隣の席の女性は、米沢で出会い頭にぶつかった女性だった。
真一「偶然ですなぁ…」
女「今日はよく出会いますね(笑)」
真一「東北を旅されているんですか?」
女「東北もですが、北海道も行きたいなぁ…と」
真一「そうですか」
女「旅されているんですか?」
真一「えぇ。僕は北海道に行くんですが、仙台まで普通電車の旅やったんです」
女「どちらからですか?」
真一「南町です」
女「え❗ 今日出られたのですか?」
真一「いえ、昨日の朝からです」
女「えー、じゃあ今日北海道に入られますか?」
真一「今日は青森までです」
女「そうなんですか…。のんびりした旅、羨ましいですね」
真一「いやぁ、ただの暇人なんですよ(笑)。ところでどちらからこちらへ?」
女「私は東京からなの」
真一「じゃあ新幹線なら早いですよね…」
女「昨日、福島にいて、今日は福島から米沢に行って、仙台まで出てきたの。最初は東北を巡ろうかと思ったけど、青森まで行けば、北海道も目の前だし…」
真一「そうやったんですか…」
女「私もそんな旅したいなぁ…って、いま旅に出てるんですけどね(笑)」
真一「いいじゃないですか。楽しい旅にしてください」
女「そうしたいんですけどね…」
真一「…?」
女は少ししょんぼりしながら答えた。真一は少し気になったが、あえて何も触れなかった。
女「私、由貴と言います。あなたは?」
真一「あ、オレ真一と言います」
由貴「真一さん、私より年下に見えるけど…」
真一「いま27歳です」
由貴「じゃあ私が年上だね。三十路なの」
真一「大人のお姉さんですね」
由貴「そんないいもんじゃないよ」
真一「いま一人旅してる暇あるんですか?
旦那さんが待っておられるのでは…?」
由貴「人妻に見える? 私独身だよ」
真一「し、失礼しました…」
由貴「彼氏は一応いるけどね…」
真一「じゃあ、彼氏が待ってるやないですか」
由貴「いいのよ、あんな人…」
真一「…? ケンカでもしてるんですか?」
由貴「浮気されたの…」
真一「えっ?」
由貴「よりによって私の親友とね」
真一「えー…。逃避行ですか?」
由貴「そう。あてのない旅」
真一「あてのない旅って、今日はどこに泊まるんですか?」
由貴「何も決めてないよ」
真一「えー…。最終的にはどこへ行くか決めたんですか?」
由貴「決めてないけど、真一くんが北海道へ行くなら、私もついていっちゃおうかなぁ…(笑)」
真一「えー…(笑)」
由貴「迷惑よね…」
真一「いや、オレは構いませんけど、由貴さん、やっぱり彼氏がおってんやから、そこはね…(苦笑)」
由貴「旅してるときくらい、彼氏のこと忘れたいの」
真一「そうですか…。オレは別に構いませんけど…」
由貴「今日、どこに泊まるの?」
真一「青森の駅前のビジネスホテルですけど…」
由貴「私も今日青森で泊まろ。ビジネスホテルの連絡先って知ってる?」
真一「えぇ…」
真一は由貴にビジネスホテルの連絡先を教えた。
由貴は新幹線のデッキで電話をし、青森駅前のビジネスホテルに空き状況を確認して、予約を入れた。
由貴「真一くんが泊まるホテル、空きがあったから、予約入れたよ」
真一「よかったですね」
由貴「ねぇ、いつまで旅するの?」
真一「昨日から数えて、2週間半ってとこですね」
由貴「ホテルとか行き先とか決めてるんだ」
真一「大まかにですけど…。でも現地行って何するかは何も決めてません。行き当たりばったりの旅なので…」
由貴「いいなぁ…。私もこれから2週間半ついていってもいい?」
真一「…ホントにいいんですか? 怒られるのわかってて言いますけど、一応…」
由貴「彼氏に言われたら、私からちゃんと話すから、真一くんは気にしないで」
真一「え、あー、はい…」
由貴「別に私、浮気してるんじゃないから。傷心旅行でたまたま一人旅の男の子と出会っただけなんだから…。大丈夫だよ」
真一「は、はぁ…」
真一は由貴に丸め込まれ?ながら、由貴の意見を尊重した。
新幹線は終点の盛岡に到着した。
盛岡からは青森行きの普通電車に乗り換える。
連絡時間もちょうどよく、青森行きの普通電車は、真一と由貴を乗せて盛岡を発車した。電車が発車して真一と由貴が話はじめた。
由貴「真一くんは彼女いないの?」
真一「今はいませんよ。あ、います。旅がオレの『彼女』なんで…」
由貴「何それ?(笑) 旅が『彼女』なの?」
真一「えぇ」
由貴「どうやって『彼女』とデートするの?」
真一「旅すること自体がデートですから…(笑)」
由貴「そうかぁ、旅か…。女の子は興味ないの?」
真一「全くない…というわけでもないですが、何て言うか…疎いというか…」
由貴「そうなんだ。でも好みのタイプとかはあるでしょ?」
真一「うーん…あんまり考えたことないけど、同い年か年上のお姉さんがオレにはあってるのかも…。容姿は二の次ですから、オレは『その人がどんな人なのか?』、そこが一番見てるところですかね…」
由貴「今時中々いないね、そんな男の子。胸の大きい女の子とか気にならないの?」
真一「容姿はどうでもいいですよ。やせ形だろうがふくよかであろうが、胸が大きかろうが小さかろうが…」
由貴「私はダメかなぁ…?」
真一「彼氏さんに怒られますよ」
由貴「あ…」
真一「あ…、言っちゃダメでしたね。すんません」
由貴「ううん、悪気があって言ったんじゃないからいいよ。でもしばらくは彼氏の事忘れたいから、真一くんに私の北帰行に付き合ってもらおうかなぁ…」
真一「えー…」
由貴「迷惑だよね…」
真一「どうしても…って言うのなら…。でも明日以降、宿がとれるかどうかわからないですよ」
由貴「明日以降泊まるところ教えてくれる? 電話をかけてみるから…」
真一「わかりました。たしか、オレ明日は登別温泉ですよ」
由貴「ダメ元で電話するね」
真一「はい…」
由貴「真一くんは今回の旅って、どんなルートでまわるの?」
真一「札幌まで電算に乗ります。今晩は青森、明日は青函トンネルを通って函館行って登別温泉で泊まり、次の日は一旦札幌を越えて小樽まで電車で行って、そのまま小樽で泊まり、翌日小樽から電車で札幌に戻ってレンタカーを借ります」
由貴「札幌でレンタカー借りてどこに行くの?」
真一「日高の方へ行って、
由貴「いいなぁ。ホントについていきたいよ、真一くん。ダメかなぁ?」
真一「由貴さん、ホントに予定考えてないんですか?」
由貴「そうだよ。ホントに行き当たりばったりだよ(笑)」
真一「もし泊まれなかったりしたらどうするつもりなんですか?」
由貴「野宿かも…(笑)」
真一「それは危険過ぎますよ」
由貴「じゃあ、私の北帰行付き合ってよ。真一くんの予定に合わせるから…」
真一「ホンマにそれでいいんですか?」
由貴「いいよ。米沢で出会い頭にぶつかった時から、さっき仙台で新幹線で同じ席になったし、これも何かのご縁よ。傷心旅行って結構ヒステリック満載だけど、こんな北帰行もいいかなぁ…って思ったの。『旅はみちづれ』って言うじゃない(笑)」
真一「まぁ、そうですなぁ…」
そう話し込んでいるうちに、電車は終点の青森駅に到着した。
真一と由貴は駅前のビジネスホテルへチェックインして、お互いシャワーを浴びてから夜の青森の街へ繰り出した。
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