第4話:追放刑

 私から見れば頼りない弟ですが、この世界の基準では神童です。

 両親の期待は天よりも高いのです。

 私も同じように期待されましたが、残念ながら女です。

 貴族の爵位を継ぐのには圧倒的に不利でした。

 弟が幼くして領地を豊かにする方策を提案してからはなおさらです。

 あいつも絶対に転生者です、そうでなければわずか八歳で、あれほど領地改革をできるはずがないのです。


 話が横道にそれてしまいましたが、ようは、弟が領地の全権を握っているのです。

 弟が私をレナス公爵家から追放すると決めれば、誰も邪魔できないのです。

 それだけの実績を上げてきてるのです。

 王太子には王都から追放され、弟からは公爵領から追放されました。

 これで思いのまま自由に生きていけるのです。


「タマ、サクラ、タゴサク、ゴンベイ、待たせてごめんね」


 私は王都外壁近くで待っていてくれた、四頭の虎型魔獣に謝りました。

 私が幼い頃に魔境で助けた可愛い子達です。

 私は頭脳派の弟とは違って、身体を使うのが得意でした。

 特に喧嘩は大好きで、レディースのタイマンでは負けた事がありません。

 いえ、多数が相手でも、負けを認めた事はありません。

 だからたとえ相手が邪悪な竜であろうと、母虎を殺されて泣いている子虎達を見捨てて、背中を向けて逃げたりはしないのです。


「「「「グルルルル」」」」


 このモフモフに囲まれる幸せは、何物にも代えがたいです。

 この世界の両親や家臣が心配するので、魔境通いは秘密にしていましたが、この子達との憩いを失う事など考えられませんでした。

 特に王太子と婚約させられてからは、モフモフの癒しなしでは我慢できないくらい、苛立ちと怒りの日々でした。

 まあ、多くの邪悪な魔獣が死ぬ事もありましたが、仕方のない事です。

 全て鳥頭の王太子が不実な行動をとり続けたせいです。


「ようやく王都を出て行く日が来ました、これからはずっとお前達と一緒です。

 さあ、背中に乗せてください、壁を飛び越えてください」


 私の言葉を全て理解する虎魔獣は、直ぐにタゴサクが私を背に乗せてくれました。

 本当はレディースの頭を張っていた頃のように、先頭を翔けたいのですが、それは四頭が許してくれません。

 私の安全を確保しようと、常にゴンベイが先頭をきって翔け、待ち伏せや罠を事前に探ろうとしてくれます。

 まるで特攻隊長や親衛隊長のようです。

 そしてタマとサクラが左右の後衛を務めます。


「「「「クッオオオオオオオン」」」」


 これからは私と一緒の暮らせると喜んで、四頭が雄叫びを上げてくれます。

 私も同じように叫びたかったですが、ほんの少し恥ずかしいので、やめました。

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