第10話 鬼ヶ島
生成と青竹は、布を見つけてそれで金棒を背中に担いだ。金棒は重たいので、それ以上は手に入れてもしょうがない。俺は時々千草を負ぶう必要があるし、木刀で十分なので金棒は持って来なかった。
やがて、海に出た。そこから、目の前には鬼ヶ島が見える。ごつごつした岩肌の見える、いかつい島だった。海岸を見渡すと、古い小舟が三隻ほどあった。二隻に二人ずつ乗り込み、鬼ヶ島へ向かう事にした。
「この船、大丈夫なのか?俺泳げないぞ。」
青竹が、相変わらず情けない声を出す。
「大丈夫だ。俺が何とかする。」
俺はそう言って、俺と青竹とで一隻の舟を漕ぎ出した。後ろには生成と千草の舟。内海の穏やかな水面を、ゆっくりと小舟が進む。まだ日の高いはずの昼間だが、どんよりと曇っていて、辺りは薄暗い。今にも雷が鳴りそうだ。
島に着き、そっと上陸する。岩の洞窟のような所に入って行くと、早速鬼たちが行き来しているのが見えた。俺たちは身を隠した。
「ねえ、あれなに?」
千草が小声で言い、指を差した。その方角を見て、みんなは思わずあっと声を上げた。洞窟の奥に、ピカピカ光るものを見つけたのだ。赤や緑の四角い光るものがたくさんついた、四角い黒い何かがたくさんある。ピーとかカチャカチャとか、音がする。そして、鬼たちが何匹もその黒い何かの前に座り、指をしきりに動かしているのだった。
俺たちは、厨房を探した。鬼たちが食料を保管し、料理している場所があるはずだ。こそこそ動き回るうちに、やっとそれらしき場所を見つけた。俺たちは、ここへ来る途中で大量に仕入れておいたよもぎの葉を、鬼の目を盗んで細かく切り刻み、大きな鍋の中へ入れた。そして、しばらく身を隠して食事の時間を待った。
いい匂いがし始め、鬼がどんどん集まって来た。食事の時間が始まるようだ。俺たちは岩陰からじっと見ていた。鬼たちが一斉に食べ始める。すると、次々に苦しみだした。異変を感じて食べるのをやめた鬼が数匹いるが、ほとんどの鬼が苦しみ、倒れた。
「やったぞ!」
俺たちは思わずこぶしを握り締めた。そして、食べずに生き残った僅かな鬼に向かって、攻撃を仕掛けた。
「とりゃー!」
「うぉー!」
俺と生成が打ち込みに行き、青竹は千草を背に、金棒を構えた。鬼を倒し、次はさっき見たピカピカ光るものの所へ走った。そして、それを金棒でめちゃくちゃに殴りつけた。ビリビリと音がして、どんどん光が消えて行った。すると、洞窟を照らしていた数々の灯りが消え、真っ暗になった。あちこち見て回ると、あらゆる村から集められたと思われる金銀財宝を見つけた。それをそこら辺にあった荷車に乗せ、帰ろうとした。すると、
「こらあ、何をしているか!」
と、それはそれは大きな声がした。見上げると、大きな鬼がいた。岩だと思っていたものが、実は鬼の体の一部だったのだ。
「うわー!」
俺たちは思わず悲鳴を上げた。
「お、お前、人間の言葉を話すのか?」
青竹が言うと、
「そうだ、翻訳機能を使ったのだ。だが、お前たちはコンピュータを破壊してくれたな。停電したではないか。」
「こん・・ぴ?何?ていでん?」
何を言っているのかさっぱり分からない。
「お前、ここから出ていけ!もうお前の仲間はいないぞ!」
俺が叫ぶと、
「ここにいるのは、我々の仲間のほんの一部だ。支部なのだ。本部は江戸にある。そこと通信していたのに、お前らのせいで通信が途絶えてしまった。許さん。」
その大鬼は、立ち上がった。そして、手のひらで俺たちをはたこうとする。俺たちは逃げ惑った。
「朱李、何とかならないのか?」
青竹が叫んだ。今や青竹や千草も逃げ惑うほかない。何か、方法はないだろうか。
すると、ゴロゴロという音が空から聞こえたかと思うと、突然バリバリという激しい音がした。
「うぎゃあ!」
驚いた。立ち上がった大鬼の頭上に、稲妻が差し込んでいた。
「放れろ!」
俺は叫んだ。大鬼は体を幾度か震わせ、そのうち後ろに倒れた。海の中に倒れ、大きな水しぶきを上げた。そして、沈んでいった。
「何が起こったんだ?雷が大鬼に落ちたのか?」
生成が言った。
「たぶん、な。」
青竹が呆然として答えた。
「とにかく、ここの鬼は倒した。お宝をいただいて帰ろうぜ!」
俺はそう言って、荷車を鬼が持っていた大きめな船に乗せ、自分たちも乗り込んで島を後にした。
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