第6話 過去の私

 私は田中棘巳たなかとげみ田中優弥たなかゆうやの妹である。


 こんなふうに喧嘩しだしたのはいつからだろうか。


 過去の思い出にきっかけがあるのだろうかと今は昔を思い返してみることにする。







 〜 過去の記憶 〜


 別に私は元からあんな性格をしていたわけではない。


 誰でもかどうかは個人差があるかもしれないが、小学生の時お兄ちゃんがかっこよく見えていた時期があった。


 私達の世代は運悪くいじめが多発していたが、多分立ち回りをその時は上手くしていたのだろう。


 いじめにあうことは無かった。


 一方お兄ちゃんはというと、いじめを受けていた。


 暴力された傷、皆からの助けもなく、泣くこともなく傷つくことに慣れている節があった。


 見るに見かねた私は先生たちに言おうとした。


 するとお兄ちゃんは言った。


 平気な顔で言ったのだ。


『俺がいじめに屈しなかったからいいんだ。あんな奴らと同じレベルに成り下がりたくない。だから抵抗しなかった。抵抗しなかった自分が悪いんだから、自業自得だ。だから、何も言わなくていい』


 私はこの時にかっこいいと思ってしまった。


 強がりだろうとなんだろうと、意地を張って貫いたお兄ちゃんを本当にかっこいいと思った。


 時が過ぎ、私達は中学生になった。


 この時は、意外かもしれないがお兄ちゃんは部活をやっていた。


 サッカー部に入っていて、一緒に遊んでくれることが少なくなり少し寂しかったが、部活を陰ながら応援していた。


 たまに見に行ったりして、様子を見に行った。


 思えばここからだった、お兄ちゃんから格好良さが消えたのは……。










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