第四十五時限目
あたしの歩幅など気に止める様子も無く、拓は雨が打ち付けるアスファルトの上を少し荒っぽく歩く。
「ねぇっ!」
「……」
「拓っ!」
いくら雨が強いからといえ、あたしの声が雨音に消える訳が無い。
(もう…何なのっ!?)
「無視するなっ」
苛立ちが込み上げてきたあたしは、わざと自転車の荷台部分を強く引っ張った。
「何だよっ!」
「それはこっちのセリフっ!何なの!?朝から気分悪い!」
「お前が勝手にイライラしてんだろーがっ!」
「あんたの雰囲気と態度があたしをイライラさせてんのっ!」
本当は今日、拓が来てくれて凄く嬉しい。
なのに
どうして1人ぼっちの登校よりも寂しい思いをしなければならないの?
あたしは拓の背中じゃなくて、顔を見て並んで歩きたいのに…
「いちいちうるせーなぁ…」
そう言い、軽く舌打ちをした後突然自転車を停め、今まで歩いて来た道を引き返し始めた。
「何処行くのっ!?」
「帰んだよ」
「はっ!?ちょっ、待って!」
あたしは自転車をそのまま置き去りにし、早足で駅へと戻る拓を追い掛けた。
「拓!!」
「……」
「学校行こ!?桂太君待ってるよ?」
「……」
(せっかく来てくれたのに…)
きっと……ううん
100%原因はあたし。
勿論理由なんて知らない
ただ、拓のあたしを見る目がそう感じざるおえなかった。
「あたしが帰るっ!」
「…は?」
今日、初めて見る仏頂面以外の顔。
「帰る帰る!拓はこのまま学校行って!」
「いや、いーって…俺帰るし」
「あたし毎日学校行ってるし、今日生理だから帰るっ」
(何赤裸々な事言ってんだよ、あたし…)
「…お前…アホ…」
登校中にある遮断機の前で立ち止まり、拓が傘を勢いよく回した。
「わ゛っ、冷たっ…」
「行くぞ」
「ど、何処にっ?一緒に帰るのは無しだからねっ!」
「帰んねぇーよ」
180度回転しあたしにデコピンをした後、拓はまた自転車を動かし歩き始めた。
「完璧遅刻だよな」
「うん…」
今度はあたしのペースに合わせ、ゆっくり歩いてくれている。
「じゃ丁度いいや」
「何が?」
「お前にさ、話あんだよね」
「話?」
(何だろ。学校サボってた言い訳かな…)
「本当は放課後にでも話すつもりだったんだけど…」
一点を見つめ、表情を変えずにただ口だけを動かす拓に、あたしはほんの少しだけ胸騒ぎがした。
「…嫌な話?」
「……」
「また雰囲気悪くなる様な話なら、あたし聞かない」
「…お前次第だよ」
(え…?あたし次第…?)
「どーゆう意味?」
拓の言ってる意味が理解出来ず、あたしは石につまづきながらも拓の顔を見続けた。
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