第三十二時限目
「エロ本の見すぎだ」
拓がピザをむさぼりながらあたしに言う。
「君も少しは桂太君を見習おうね」
「ぷっ(笑)」
「…何」
「ケントデリカット(笑)」
「何ぃ~!?」
「あ、桂太っ!タオル投げてっ!」
「はぁ?何で」
「ギブギブっ!」
「バカじゃねぇの?(笑)」
あたしの思い描いていた恋愛
それはお互いがお互いを尊敬し合える様な、成長し合える様な関係…
「拓さいあ…ぶっ、ぶえっくしょいっ!」
「うわっ!!ピザ飛んだしっ!」
「あ゛、鼻にピザが…」
「こいつ女捨ててね!?」
あたしは恥ずかさと怒りで顔を真っ赤にしながら拓を追いかけ、そしてそんなあたしを楽しそうに挑発する拓。
(もぉ~っ!こんなの絶対恋人同士なんて言わないよ…)
半泣き状態で拓を追い回していると、突然桂太君と菜緒が荷造りをし始めた。
「あれ?何か買い出し!?」
あたしは追いかけるのを辞め、菜緒の隣に腰を下ろす。
「あたし達、帰る」
「え゛!何で!?」
「拓っ、あんたも結芽の隣に座りなさい」
「へ?何で?」
「いーから座れって」
桂太君が拓を捕まえ、無理矢理あたしの隣に座らせた。
「結芽」
菜緒があたしの顔を両手で挟む。
「今日は何の日?」
「…拓の誕生日…」
「『おめでとう』は言った?」
「…まだ…です」
菜緒があたしの顔から手を離し、今度は隣にいた拓の両耳を引っ張る。
「拓」
「イエスッ……いでででっ!耳千切れるっ!!」
「真面目に聞きなさいね!?」
「…はい」
菜緒に変わり、今度は桂太君が話し始めた。
「お前と結芽ちゃんは何なんだ!?」
「…バカップル!?」
「そう!違う意味でのなっ!」
「違う意味だって…(笑)」
何故か爆笑しながらあたしの顔を見る拓の頭を、桂太君と菜緒がすかさずチョップした。
「結芽と拓はガキすぎるっ!」
「や、菜緒。ガキなのは拓だけだって」
「だから桂太は結芽に甘い!結芽も十分ガキ!」
いつになく激しい口調の菜緒に、あたしと拓は思わず体を小さくする。
「結芽っ」
「はい…」
「バカ拓っ」
「はい…」
「あんた達、今夜一線越えなさいっ!」
「「…はい!?」」
菜緒の発言に、あたしと拓は勿論の事、そして何故か桂太君も驚いた。
「拓、あんた得意分野でしょ?」
「知識は豊富でも実習した事ないし…」
「結芽っ、分かった!?」
「ぜ、絶対嫌だっ!!」
今度はあたしの発言に拓が驚く。
「嫌なのっ!?」
「だって拓とでしょ!?考えらんない!」
「…あっそ。じゃ他の奴ならいいのね」
「別にそんな事言ってないでしょっ!?」
「あ~ぁ。忘れらんない誕生日だわ、バンザ~イ」
「だからっ…」
「いい加減にしろ――――っ!!」
「「……っ!!」」
菜緒の怒鳴り声にあたしと拓は体が硬直。
「桂太、帰るよ」
「え!?あ、うん」
「菜緒っ、ちょっと待って!」
「桂太っ!」
「じゃぁね!月曜日には成長してる2人が見れる~!楽しみぃ~」
「ち、ちょっとぉ―!!」
こうして、桂太君と菜緒は手を差し延べるあたしと拓を残し部屋から出て行ってしまった。
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