第三十時限目

「「わぁぁ――ぁぁ……?」」




ハシャギ声だった桂太君と菜緒が、徐々に疑問系へと変わっていく。



「…す、すげぇ…」




拓はその一言を言うなり、目を真ん丸にさせていた。




「あ、あれ?苺が乗ってない…」




「ゆ、結芽…苺は箱の中…だけど…」




菜緒が顔を引きつらせながらケーキの箱を指差す。




「あ!本当だ~(笑)」



あたしは落ちていた苺をケーキのど真ん中にドスンと置く。




「持ち歩いたから形崩れてるけど、多分美味しいよっ!」




「お、美味しそうだよね!桂太っ!?」




「う、うん!今まで見た事ないよなっ!拓っ?」




「あ!?あっ、だ、だよなぁ~!生クリームうんこみたいだぜ!?さすが結芽っ……」




「このアホっ…」




慌てた様子の桂太君が、拓の頭をテレビのリモコンで叩いた。



「いでっ……お前、角は痛ぇだろ!」




「結芽ちゃんに謝れっ」




「何でだよ!?」




「せっかくお前の為に作って来てくれたんだぞ?」




「だから褒めてんじゃねーかよっ!」




拓が頭を擦りながら、桂太君に猛反発をし始めた。




「見ろよ!このうんこっ」




桂太君がリモコンを再度手に取る。




「ち、違うっ、生クリーム!生クリーム見てみろって!」




あたし達は黙って視線をケーキに向けた。




「この真ん中にある、バカでかいとぐろ巻いてんのが親分で、その周りを囲うとぐろがその家来」




「…は?」




菜緒があたしの頭を撫でながら拓を思い切り睨む。




「あ。なぁ結芽、これ何?」




「…麦チョコ」




「これは?」




「あんこ…」




「え゛っ!?洋菓子にあんっ…」




突然、驚いた様に叫んだ桂太君は菜緒におでこをグーでこづかれ我に返った。



「…もういい」




あたしはテーブルの上に出されたケーキを箱の中へと戻す。




「このバカ男コンビっ!」




菜緒が凄い形相で桂太君と拓に怒鳴った。




「た、拓っ!お前が悪い」




「あぁ!?俺はただ…」




「『ただ』何?」




あたしは言葉を詰まらせる拓に突っ込む。




「ただ…」




「……」





「すげぇユーモア感があるケーキだなぁ…なんて…」





あたしの頭は溶岩が流れる寸前。




「ゆ、結芽ちゃんごめんね!?」




「……」




「ゆ、結芽ちゃん…?」




「そこの3人。とりあえず食べて」



「は、はいっ…」




ケーキに使われた物…



スポンジや生クリームの材料を除いて挙げれば、苺に麦チョコ、バナナにくるみ…




そしてあんこ。




普通に考えて、あんこはケーキに混ぜたりしない。



ただ、あたしは『カステラみたいになるかも』とゆう1度に2度楽しめる様、あえてあんこをケーキのど真ん中…生クリームの上にのせてみたのだった。






「菜緒、拓っ」




「「いただきます…」」




ケーキを切り分けた3人が一口大のケーキを口へ放り込む。




(見た目は悪いけど、味は文句無いはず。だって食べれる材料使ってんだから…)




「どうよ?」




まずは菜緒。



「…苺が甘酸っぱくて…美味しい…かな」




次に桂太君。



「生クリームの作り方上手いねっ…お、おかわりしよっかな…」




「でしょ!?本見て作ったんだから味はいいはず。」




あたしの気分は上々




そして最後。




ケーキを頷きながら食べる拓に、あたしは感想を聞いた。


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