第二十八時限目

(予算は5千円。それで拓が喜んでくれる物…)




時刻表さえ確認せず飛び出したあたしは、駅前の本屋さんに自転車を置き、既に発車時刻まで停まって待っていた電車に乗り込んだ。



そして数分後、電車は沢山の乗客を乗せて発車




本来降りるべきであった拓の地元を通り過ぎ、約20分かけて目的地である街へと到着した。




(何処で何を買おう…)



改札を抜け、行く場所さえ決まって無かったあたしは行き交う人々の中立ち尽くす。




(あんまり遠くまで行ってる時間無いし…とりあえず駅周辺探してみよう)




こうして、あたしは駅から走って約5分の場所にある若者向けのビルへと急いだ。







そしてビルの中。




男性に贈り物等した事が無かったあたしは、手当たり次第店とゆう店をはしごした。



「ネックレス…帽子…好みが合わなかったら困るな…」




お勧めの商品を説明し始める店員の話しを上の空に、あたしは目に映る物全てを物色。




(あ゛~分からない…)



店員さんに軽くお辞儀をし、次の店へ向かおうとした時、




バックの中で何かがブルブルと振動した。




「…ん?」




店の外で立ち止まり、バックの中を掻き分ける。




(…電話か)




あたしは電話に出ようと、ディスプレイに表示される名前を見た。




(げっ…拓だ)




「も、もしもし…」




「このすっとこどっこい」




「…はい!?」




とてつもなく低い拓の声。




「何処にいんだよ?」



「ど、何処って…何が?」




「もうバレてんだよ!もう6時だぞ!?ケーキ持って早く来いっ!」




「わっ、ちょっとっ…」




誕生日会をする事は、拓には内緒にしていたはず。



(何で知ってるんだ…?)




急いで品物選びをしていたつもりが、夢中になりすぎて集合時間よりも2時間の大遅刻。



結局プレゼントは断念



あたしは3人に怒鳴られるのを覚悟しながら慌てて電車に乗り込み、電車を降りてからも休む事無くひたすら走り続け、全身ボロボロになりながら拓の家に着いた。




あたしがインターホンを押そうとした時、頭上から聞き覚えのある声が降って来た。




「おじさん達なら、急遽旅行に出掛けましたとさ」




後退りし、上を見上げる。




「…拓っ」




「皆さん、首を長~くして待ってますが」




「今行くから!」




あたしは玄関のドアを勢いよく開け、拓達が待っている2階の拓の部屋へと階段を上った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る