第十七時限目
「俺の彼女ん家、こっから徒歩40分の場所にあるから泊めてもらう~」
「…微妙に遠いっすね(笑)」
「んじゃね~」
「あ、俺も途中まで渉君と帰るから…」
いつもと同じ解散風景
「結芽ちゃ~ん」
遠くから渉君があたしを呼んだ。
「何ですか~!?」
「彼氏とHしたら教えてね―っ!!」
あたしの横を自転車に乗った若いお兄ちゃんが『ブハッ』と笑って通り過ぎた。
「早く第ニの巣に帰れ――――っ!!」
(何で世の中微妙に拓に似た輩が多いんだ…?)
剛君に引っ張られ、若いオヤジは暗闇に消えてった。
(渉君…絶対彼女さんの尻に敷かれてるな)
「結芽ちゃん、俺等も帰ろ」
「うん」
あたし達はゆっくりと駅に向かう。
「結芽ちゃん」
「はい?」
「明後日どーする?」
「あ、拓の誕生日?」
「やっぱり2人でやりたい?4人はダメ?」
「全然(笑)4人でしよ?」
桂太君の顔がパァッと明るくなった。
(本当に拓が好きなんだ…(笑))
「明後日は土曜日だから…あっ、じゃぁ明日の放課後拓抜きで作戦練んない!?」
「拓抜き…?出来るかな~」
「結芽ちゃん絶対負けちゃダメだよ!」
「…分かった」
彼女のあたし以上にはしゃぐ桂太君
(拓は幸せだなぁ)
それから電車に乗り、桂太君が下りるまでひたすら拓の誕生日会ネタを延々と論議していた。
翌朝。
あたしはいつも通り拓と駅前で待ち合わせ。
「拓さ~ん!おはよ~♪」
「お、今日は早え~な」
「そ?さ、早く行こっ」
「はいはい」
いつもみたいに自転車で2人乗りをしなくても全然余裕な時間
あたしと拓は珍しく自転車を手で押し、途中出くわしたクラスメート達と会話をしながら学校に到着した。
校門前。
「あ」
「何?」
「前にあっちゃんがいる…」
あたし達の少し前をいつもは友達と2人でいるのに、今日は1人で歩いている敦子先輩。
(話出来るチャンスかも…)
「拓、先教室行ってて?」
「朝から辞めとけよ」
「大丈夫っ、いつまでもこんなんは嫌だし」
「お前1人で大丈夫なんか?」
「何言ってんの(笑)人間相手に話すだけなんだし…。じゃねっ」
拓を残し、あたしは小走りで門をくぐる敦子先輩の元へと向かった。
「あっちゃんっ…」
内心ドキドキしながらも、敦子先輩の背後からひょこっと顔を出す。
「…あんた誰だっけ?」
「う、うわ~(笑)きっついなぁ~、結芽だよ!」
「…あぁ、うっすら記憶にあるかも」
そう言うと、敦子先輩はスッと体を前に向け下駄箱へと歩き始めた。
(…だよね。よし、じゃぁ最後の手段っ!)
「あっちゃん!」
「何…」
「2人で駆け落ちっ!!」
あたしは拍子抜けしている敦子先輩の腕を無理矢理引っ張った。
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