第十一時限目
そして拓は自分の父親の事を話し、桂太君は何も言わずに聞き、菜緒はただ泣いていた。
結局、菜緒と桂太君が言っていた『黒幕』の存在は敦子先輩で、菜緒は同じクラスで敦子先輩とよく遊ぶ地元の子から情報を聞き出したらしい
菜緒は『やっつけてやる』なんて言ってくれたけど、これはあたしと敦子先輩の問題
あたしは怒りまくる菜緒にお礼を言ってなんとかなだめた。
全部を言い終えた後、桂太君はあたしの頭を撫でてくれ、菜緒は『おめでとう』と言いあたしを抱きしめてくれた。
敦子先輩とは放課後に話をしようと思っていたが、田村によると敦子先輩は高熱で欠席だったらしい
今思えば、あの日既に具合が悪かったから拒否されたのかもしれない
結局、それからも敦子先輩とはすれ違いの日々で、わざとなのか部活でも顔を合わせる事無く未だ話し合いはしていない。
「あたしと桂太、あんた達の事でケンカもしたんだからねっ!」
菜緒が苦笑いしながら言う。
「え、嘘…」
「でも…まぁそれだけあたしと桂太はあんた等が好きだって事っ!」
「菜緒~」
あたしは嬉しさの余り、菜緒に飛び付いた。
「ぅわっ!キモイっ」
「い~じゃ~ん♪」
「ところでさ、どっちから言ったの?」
「何を?」
「『付き合って下さい』って」
菜緒に言われて初めて気が付いた
とってもとっても大事な言葉
「…アハハハ…」
「……?」
「言って無いし、言われて無い…」
「え゛ぇっ!あんた達付き合ってないじゃん!」
「みたいだね(笑)」
「拓は!?拓は何も言って来ないの?」
「特には…」
菜緒が携帯を取り出す。
「何処に掛けるの!?」
「あほ拓の所っ」
「えっ!いいって!」
あたしの言葉を無視し、菜緒は拓へと電話を掛けた。
「もしもし!?」
(困ったな…)
「あんた何か結芽に言う事あるでしょあほっ!」
これだけ。
この1言だけを言い、菜緒は電話を切った。
「菜緒っ、これだけ言ったって…」
あたしの携帯が鳴る。
「拓じゃない?」
「か、かも…」
「今日が記念日だからねっ!」
「う、うん」
内心ドキドキしまくりなあたし。
(何か照れるな…)
「もしもし…?」
「俺…拓」
「うん…」
隣では菜緒が目をきらきらさせながら事の結末を見送ろうとしている。
「あ、あのさ…」
「うん…」
返事は勿論『YES』。
あたしは拓の次の言葉を待った。
「自転車の籠…へこましちゃった…」
「…は?」
「桂太とふざけてたら…ごめんなさいっ!!」
今日は『自転車の籠がへこんだ記念日』。
「ねねねっ!何言われたの!?」
「……」
「…結芽?」
「…このばか拓がぁ―――っ!!」
乙女モード全開を見事にぶち壊されたあたし。
「菜緒っ、急ぐよっ!」
「えっ!?あ、はい」
結局落ちはいつもこう。
あたしは菜緒の手を引っ張り、拓がいる学校へと向かい結果、菜緒と桂太君によってあたしと拓はめでたく?本当の『バカップル』へ昇格した。
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