第九時限目

とにかく変わった猫で体を触られるのを嫌がるし、抱っこするとエビ反りする。





今、まさにそのエビ反り状態。




「このっ、大人しく抱かれてろっ」




(誰に似たんだこの性格…)




モコを床に下ろし、1階へ下りようとした時、メールの受信音が鳴った。




《遅ぇ!早くウンコしろっ》




「してないっての…」



《すぐ出るから!》




《やっぱウンコかよ》



《違うっ!家だよ!》



何にも変わらないあたし達。




唯一変わった事と言えば、朝は拓と駅で待ち合わせて登校、そして帰りは家まで送ってもらい、何故か今度はあたしが拓を駅まで送る…




ただそれくらいだった。





あたしは急いで支度を済ませ、玄関を出る。



「結芽っ、朝ごはん!」



「帰ったら食べるっ」



「は!?それ朝ごはんって言わないから!」



「とにかく、食べる暇無いっ!行ってきますっ」




自転車にまたがり、あたしは立ちこぎで拓がいる駅に向かった。






拓と登校する様になってから遅刻をしなくなったあたし




「拓っ!」




「…マジ遅ぇ、たまにはお前が俺を待つ位してみろっての!」




待ち合わせは駅の外にある自販機の前




拓はいつもの様にそこにしゃがんで携帯をいじっていた。




「明日はそうするっ」



「男に二言は無ぇぞ」



「女だってば」




自転車を拓に渡し、あたしは後ろに乗り変える。




「飛ばすぞ、パン売り切れる」




「いいけど真っ直ぐ走ってよねっ」




拓にしがみ付き、出発しようとした時…





「おいっ、そこのバカップル!」




「結芽~おはよ~」




駅からもう1組のバカップルが姿を現した。



「結芽」



「ん?」




「逃げるぞっ」




「は?な、何で!?」



拓がベルを鳴らしながら勢い良くこぎ出す。



「こらっ!逃げんなっ」




桂太君がバックを菜緒に預け、ダッシュであたし達を追い掛けて来た。




「ちょっと拓っ、止まりなよ!」




「嫌だね、あいつ昨日の事まだ根に持ってんだぜ?」




昨日の事…




昨日の帰りは菜緒達と4人で帰っていた。




そして、桂太君と拓が何やらあたしと菜緒には聞こえない様に小声で話をしていて、突然大声で言い合いをし始めた。




「桂太!見せろっ」




「は?嫌だね」




「嘘だろ」




「嘘じゃねーし」




あたしと菜緒はさっぱり訳が分からない状態。




「ちょっと…桂太っ、止めなよっ」




「拓もっ!恥ずかしいってば!」




あたしと菜緒が止めに入ったその時




事件は起きた。


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