第八時限目
「……」
「結芽ちゃん」
おばさんがあたしの頭をそっと撫でる。
「あれ…本当は凄い弱い子だと思うの、だから…」
同情なんかじゃない
その場限りの言葉じゃない
あたしの想いが
あたしの拓への強い想いが勝手に口を動かしてくれた。
「あたし…拓の支えになります」
恋って不思議
バカで恋愛下手なあたしでも
有り得ない位の『強さ』を身に付ける事が出来る…
「結芽ちゃん」
「はい」
「あいつ、どうしようもないアホたれのエロだけど…頼むな」
「はい(笑)」
「今頃、下でメソメソしてるんじゃないかしら(笑)」
「あ、あたし様子見てきますっ」
玄関前
あたしは拓の手を取る。
「な、何だよ!?」
「たまにはあたしから♪」
「俺S派なんだけど」
「照れるなよ♪」
あたしと拓のこんな会話のやりとりが聞こえたのか、おじさんとおばさんがリビングから顔を出した。
「懐かしいわぁ~」
「こら拓、変な所行かねぇで真っ直ぐ学校行けよ!」
「うるせーよっ!」
拓に手を引かれ、あたしは玄関を飛び出す。
「あっ、あの行ってきますっ」
「いってらっしゃい!」
「結芽ちゃぁん、次からは『おじさん』じゃなくて『和也』って呼んでね~」
「は~い(笑)」
時刻は既に1時間目の授業に突入する頃
「結芽~」
「何ぃ?」
「このまま行っちゃう!?」
「何処に?」
「丸いベットがある所…」
「絶対行かんっ!」
「あ、そ…」
「桂太君と菜緒にちゃんと報告しなきゃ」
「あ~それもそうだな」
自転車を拓がこぎ、その後ろにいつも通りあたしが乗る。
「つかまれよ」
「うん」
今日は快晴
雲1つないいい天気
あたしは拓の腰に腕を回し、
そして拓はそんなあたしの手を片方の手で優しく握ってくれていた。
あれから約2ヶ月の月日が経ち、暦は6月の終わりを告げようとしている。
天気は今日も雨。
暑い様な肌寒い様な…
そんな中途半端な気温と苦手なカエルが出没するこの季節…
あたしはなかなかテンションが上げられずにいた。
「結芽っ、起きてるの~!?」
いつもの如く、1階からお母さんの叫び声が聞こえて来る。
「今起きる~」
(雨降ってると体だるいなぁ…)
布団の中でモゾモゾしていると、部屋の外からドアをカリカリと削る音がした。
「モコ~?削ったらお母さんに怒られるよ~?」
あたしはベットから起き上がり、ドアを開けてモコを抱き上げた。
最近のモコは本当におてんば娘。
家の目の前にある大きな杉の木に登り、カラスの巣を襲撃しようとして逆につつかれ…
ついこの間なんか学校から帰宅し部屋に入るとネズミがテーブルに贈呈されてあった。
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