第六時限目

あたしはおじさんの反応が怖くて顔を上げれず、うつ向いたまま。




(拓のバカっ…せっかく気持ちを伝えられたばっかだったのに…)




「おじさん」




「……」




拓が頭を掻く。




「結芽」




「…はい」




「顔上げて」




(…無理だよ)




「結芽ちゃん、顔上げて?」




おばさんが苦笑いしながらあたしに言う。




「……」




心臓は口から飛び出る寸前




あたしは恐る恐る顔を上げた。







「………え?」






目の前には歯を剥き出しにして満面の笑みを浮かべているおじさんの姿。





(…何?何で笑ってるの?)




「結芽ちゃん」




「は、はい」




「ごめんねぇ~おじさん知ってたぁ♪」



「は、はい!?」




「だから、結芽ちゃんの事は既に拓から聞いてましたって♪」




あたしは抜け殻状態で拓の顔を見る。




「なはっ(笑)」




「だって拓朝になったら紹介するって…」




「や、顔は知らねぇからさ…」




「……」




張り詰めていた緊張がほどけ、涙が溢れる。




「あ゛ぁっ、結芽ちゃんっ」




「このバカっ!何泣かせてんのよっ!」




おばさんがおじさんの足を蹴る。




「結芽ちゃん、この人はいつもこんななの、ごめんね」




「……」




「ホラ、あんたも謝んなさいって」




「ゆ、結芽ちゃん…?」




おじさんがうつ向いているあたしの顔を覗く。




「ごめんねっ…!?」



あたしはおえつを漏らしながら、ただひたすら顔を横に振った。



「結芽ちゃん、これは真面目に聞いてね?」



あたしはコクンと頷く。




「確かにおじさんは結芽ちゃんのお父さんを良くは思ってないんだ」




「……」




「勿論、おじさんの弟…拓の親父もしっかり自分の奥さんを捕まえて無かったのにも責任はあるし、逆に母親としての自覚が足りなかった拓の母親も悪い」



「…違います…悪いのはちょっかいを出した私のお父さんです…」




呼吸を整え、あたしは顔を上げた。




「拓にとって1番母親が必要な時期にお父さんが奪って逃げて…あたしはそんなお父さんの娘なんです」




口が震え、あたしは痛い位に唇を噛む。





「結芽ちゃん」




「はい」




「おじさんとおばさんね、自分の子供…いないんだ」




「え…?」




「美和がね、赤ちゃん出来ない体なの」




あたしはバッとおばさんの顔を見る。




「色々頑張ってみたんだけどね、もう辞めようって2人で決めたの」




おばさんが、少しだけ悲しい顔をした後、あたしに優しく微笑んだ。




「拓の父親が事故で突然死んで…」




「死んだ…?」




「おじさんっ」




拓がおじさんの腕を掴む。




「おじさん、その話は俺がそのうち…っ」



「聞かせて下さい」




「結芽っ」




「拓ごめんね?もう全部知ってしまいたいの」




「……」




「おじさん、続けて下さい」




おじさんがテーブルの上にあった拓のタバコを手に取り、火を付けゆっくりと話し始めた。



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