第五時限目
年齢は40代半ば位だろうか…
スラリとした体系に、なんとなく拓と似てる顔立ち。
若干茶髪で顎にヒゲを生やしたダンディ男が、くわえタバコをしながら唖然とあたしを見ていた。
「おじさんおはよ」
「……」
「お~い?」
拓の呼びかけにも全く無反応なおじさん。
「結芽も何か言え」
「え…あ、か、快晴極まり無いですねっ…」
「ぶっ(笑)」
「へ?あ、あの…」
(おじさん怒ってるのかな…)
どうしたらいいのか分からず苦笑いするあたし。
「あ!灰っ、おじさん灰こぼれるっ!」
拓がベットから勢い良く起き上がり、テーブルの上にあった灰皿をおじさんがくわえていたタバコの下に付けようとした時…
「み…美和―――――――っ!!!」
おじさんが急に『美和』と言う名前を叫んだ。
「おぉっ…びっくりしたぁ…」
「美和っ、美和っ、ちょっと早くっ!」
(な、何!?)
おじさんの叫び声と同時に、廊下からは女の人の声が聞こえて来る。
「…うるさいわね…何よ?」
「結芽」
「えっ!?」
「おばさん」
(何だと―――――!!)
「何よ!?朝から…」
拓のおばさんがひょこっと顔を覗かせた。
「…あら♪拓の彼女?」
「お前、俺の彼女なの?」
拓がタバコを吸いながらあたしに問い掛ける。
「美和っ…お前ビックリしねぇのか!?」
「だって玄関に女の子の靴あったもん♪」
ニヤリと笑うおばさん。
「拓…お前に彼女…??」
「…何だよ?」
「お前に…」
一瞬、おじさんが顔を歪めた。
(え!?まさか泣くのっ!?)
次の瞬間…
「だ――――っはっはっはっは!」
意味無くおじさんが爆笑し始めた。
「ちょっと拓っ!?」
「いつもこんなんなんだよ…」
ため息をつく拓。
「ヒヒヒ…お前っ、いっちょ前に女出来たんかぁ―!!」
「うるせぇよっ」
「通りで最近エロ本の数が少ねぇと思った(笑)」
「は!?」
思わず声を出すあたし。
「なっ!!まだヤってねぇよっ!!」
「はぁっ!?」
拓の失言に声を荒げる。
「そ~かそ~かぁ、で?君、名前は!?」
「あっ、あたしですか!?」
「そうそう、俺拓に名前聞くほどまだ呆けてないし(笑)」
「あたしの名前はっ…」
『竹内結芽』
今の名字はお母さんの姓を名乗っているからきっと言っても分からない。
あの名字さえ
あの名字さえ言わなければ…
「竹内ゆ…」
「嶺岸結芽だよ。今は竹内結芽だけど」
「嶺岸…!?」
おじさんが顔をしかめる。
「あっ、あのっ」
「結芽ちゃん」
おじさんがあたしに近付く。
「…はい」
「本当に失礼なんだけど、結芽ちゃんのお父さんの名前…教えてくれる?」
「…和彦…です」
「もしかしてだけど、職場って…」
「し、食品会社です…」
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