第四時限目
「あたしも拓が大好き」
真っ赤な顔のあたしに真っ赤な顔の拓。
「拓…顔赤い(笑)」
「うわ~嬉しいけど恥ずかし~!」
逃げる様に、拓はベットの中へ潜り込む。
「ちょっと!俺もう寝るからっ!」
「えっ、じゃ何か毛布貸して!あたしももう寝るっ」
(絶対寝れないよ…)
毛布探しをするあたしに、拓が布団の間から顔だけを覗かせて言った。
「結芽さ~ん」
「何?」
「あと約3時間、手を繋いで一緒に寝ませんか…?」
「……」
「手、繋ぐだけっ!」
「……」
「ダメ?」
「いいよっ(笑)」
「よし、じゃカモーン」
「…あ゛っ!!お母さんにメール打っとかなきゃ!!」
それから拓と手を繋ぎ横になった後、あたし達は会話をする事も無く眠りについた。
そして朝。
あたしは鳴り響く子機の電話の音で目が覚めた。
「ちょっと拓、電話だよ…」
あたしは目を瞑ったまま、拓の頭をペシペシと叩く。
「拓さぁ~ん…」
「あ゛~起きれねぇ…」
そう言い、拓があたしの首に腕を乗せて来た。
「んぐっ…」
「子機…子機どこだ…?」
あたしと同様、目を瞑ったまま子機を探す拓。
「ちょっとっ…重いっ」
「お、結芽…お前…寝起きブサイク極まりないな…」
子機の呼び出し音が消え、あたしは拓の今の一言で目が覚めた。
「…寝顔見た?」
「…寝顔?」
「そう寝顔っ!見たのかって!」
すっかり忘れていた小学校の頃の事件
(今までずっと気をつけて来たのにぃ…よりによって何で拓の時に…)
「お前…もしかして寝顔すげぇの?」
拓がモゾモゾしながら片肘を立て、顔をあたしに向けた。
「見てないならいいの」
(良かった…)
「お前先に起きろよ」
「は?拓も起きなよ」
あたしは背伸びをしてベットから立ち上がる。
「もうちょいなんだけどな…」
「何言ってんの?ホラ、早くっ!」
布団にくるまっている拓の手を無理矢理引っ張った。
「うわっ…止めろよ!」
「いい年しておもらしかぁ?(笑)」
「テントだよテント!!」
「…テント?」
拓の言葉の意味が理解出来ず、あたしはほんのりと頬を染めている拓の顔を凝視した。
(何…?)
その時だった。
コンコン…
「おらっ、拓起きろっ!!」
荒っぽい部屋のノックと共に、男の人が拓の名前を呼んだ。
「…も、もしかしてっ」
「おじさん」
(これも忘れてた――!!)
あたしは動揺のあまり、部屋の中をうろうろする。
「早く学校行けよ~?」
髪はぐちゃぐちゃで、目の下はマスカラでパンダ…
(早く下に降りて下さいよ~)
両手を組み、ドアに向かって神頼みをしていた時…
「あ、おじさんちょっと入って~」
「…え゛――っ!?」
あたしの懸命な祈りも虚しく、拓の呼びかけによって部屋のドアが開いた。
「何だよっ……」
ドアが開いた瞬間、
1番最初におじさんの目に飛び込んできたあたしの寝起き姿。
「……」
「……お、おはようございます…?」
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