第三時限目

「噂って…もしかしてっ」




身を乗り出し拓へ詰め寄ると、拓はテーブルにあるタバコに手を伸ばした。





「タバコは後」




取り出していたタバコをぶん取る。




「拓知ってたの!?」



「何の事?」




「噂!!知ってたんでしょ!?」




「…ベットインしてもいい?」




「ごまかさないで!」




逃げようとする拓の服を掴み、あたしは阻止する。




「何で嘘付いたの!?」




「嘘っつーか…」




「…そっか、あれだ。クラスの誰かから聞いたんだ。」




「……」




「それで桂太君からも言われて、同情して追いかけて来たんだ…」








よく考えれば分かる事



違うクラスの桂太君と菜緒にまでも行き届いている噂を同じクラスの拓が知らない訳が無い。



「同情なんかするかよ」




「あたしバカみたいじゃん…走って逃げて挙げ句の果てには吐いて…」




拓の顔が滲んで見える。





「おい」




「……」




「おいっ、返事しろコラ」




「…何」




「君はどこまでアホなんだ?」




拓があたしの頭にポンと手を乗せた。





「誰があんな噂信じんだよ?」




「皆信じてるよ…」




「みんな噂聞いて笑ってたぞ?」




「…え?」




「『竹内はそんな事出来る程要領が良くない』って(笑)」




「……嘘だよ」




「嘘じゃね~よ」




「だって…来たもん」



「あ?何?」




「メール!!来たんだもんっ!!」






拓にだけは絶対言うつもりなかった出来事




言ってしまう事で、まるで『同情して欲しい』と言っている様な気がして……そんな自分が情けない気がして仕方なかった。



「…携帯貸せ」




「やだ」




「見せろ」




「内容までは知らなくていいっ!」




携帯が入っているバックを握りしめ、あたしはボロボロ泣いた。





「桂太と菜緒には言ったのかよ?」




「言ってない。菜緒に嫌われたもん」




「は?」




「菜緒、凄い怒ってた…」




「菜緒はお前が心配なだけだって」




「分かんないよそんなの…」






昨日に引き続き、寝てないせいか頭がボーッとして来る。





「とにかくっ、明日学校行けば分かる」




「……」




「『人の噂も49日』って言うだろ?」




「…75日です」




「あ、だっけ(笑)」




「嘘…本当にあっちゃんが流したのかな…」




「分かんねぇ…」



拓がベットに移動し、ゴロンと横になった。




「拓…」




「はい?」




「拓は信じてくれる?」





これだけはどうしても確認しておきたかった事






「拓はあたしを信じてくれますか?」






言い慣れない言葉のせいか、それとも恥ずかしさからか、声が上擦る。





「結芽ちゃん」




「……」




「おいで」




拓が後ろにあるベットからあたしを呼び、そしてあたしは正座をしたままスッと後ろに体を滑らした。






「知ってる?」




拓が上半身だけを起こしてあたしの顔を覗く。





「俺はお前の事いっつも見てんだぞ?」




優しい拓の声に、あたしは更に涙が溢れる。




そして、拓は近くにあったティッシュであたしの涙を拭いながら言った。





「俺は信じるよ?結芽はそんな子じゃない」



「拓…」




「結芽?」




「……」




「大好きだよ」




ほっぺに軽くキスをされる。




「結芽は?」





次はあたしの番




本当は、全ての問題が解決してから言うつもりだった。




でも、もう押さえ切れない想いがブワッと一気に放出した。

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