第二時限目
「何か飲むか?」
「へい」
「は?(笑)」
「え?」
「何でもね(笑)」
手持ちぶさたのあたしは何をして良いのか分からず、ジュースを握りしめたまま部屋をキョロキョロ見渡す。
そして、拓がいるベットの方へ目を向けた時…
「なっ、何やってんの!?」
「あ!?」
拓がジーパンを脱ぎ、トランクス1枚になっていた。
「何脱いでんのっ!!」
「何って、着替えてんだよっ」
「変なもん見せんなっ」
「お前兄貴いんだろ?こんなん屁でもねぇだろ」
「とにかく早く何か履いて!」
「うるせぇなぁ…ムカツクからこのまんまで話そーぜ」
「う゛わ―っ!こっち来んな―っ!」
普段なら男のパンツ一丁なんてどってことない
小さい頃なんて兄貴の真っ裸を見て育ったし。
でも、何故かこの時は違った
拓の顔を直視するのも恥ずかしくてガチガチに固まったあたしの頭の中は、拓の青いチェックのトランクスで悶々としていた。
(おいおい…あたしは変態か…?)
「おい」
「何っ!」
「さみぃ…」
「だから何か履けっ!」
そっぽを向いてるあたしの後ろで拓がクローゼットからハーフパンツを取り出し、着替えを始める。
「そういえば、お前学校戻ったの?」
拓がモソモソ着替えながらあたしに話し掛けてきた。
「何で?」
「財布持ってっから」
「霧島君が届けてくれたの」
あたしは口にしてからハッと気付く。
「…霧島?」
「あ、でも仔猫も持って来てくれたんだよっ」
「仔猫?」
「うん!まだ赤ちゃんでメチャメチャ可愛いんだよ!!」
部屋着に着替え終わった拓が、ドスンとあたしの横に座りタバコを吸い始めた。
「あいつ」
「へ?」
「霧島っ!すぐ帰ったの?」
テーブルに頬ずえをつきながら拓が言う。
「ちょっとだけ上がってったけど…すぐ帰ったよ?」
「仔猫とかって…いつ貰う約束したん?」
「少し前かな?」
「へぇ―」
誰が聞いても分かる位、すんごい嫌味混じりの言い方。
「別に怪しい事無いし…」
「そういや、いつだかも朝まで一緒にいたんだよな~?」
(何だよ急に…)
「別に何も無かったし…」
「お前こんなに霧島と仲良しさんだったっけ?」
タバコで丸いわっかを作り、それをあたしめがけて飛ばして来た。
「煙い…臭い…むせる…」
「ど~なんすかね」
「たいしてそんなに仲良くも無い…かな」
「嘘付け。『僕は死にましぇん』とか言われたんだろ」
「言われて無い!ってかそこだけ言われても逆に引くし!」
「俺あのドラマ泣いたんだぞ!」
「知るかっ!」
本当、訳分からない言い合い
「もう告られ済みなんだろ!?」
「されてない」
「あいつのお前を見る目はやらしい!」
「お前が言うなっ!」
拓の部屋の時計を見ると、まもなく夜中の3時になる。
「あのなぁ、気ぃ持たせる様な行動取んの辞めろ」
急に拓が真顔で話し始めた。
「誰に?」
「男にだよ!」
「はぁ?あたし全然そんなつもり無いけどっ」
「男は気がある女と2人きりになんかなったら大抵は勘違いしちまうんだよ!」
「あたしは別に霧島君に気を持たせる様な事してないもんっ」
拓があたしをギロリと睨む。
「ホレ来た」
「何」
「やっぱ告られ済みなんじゃん」
「……あ」
拓の誘導尋問にまんまと騙されてしまったあたし。
「お前単純過ぎるんだよ」
「……」
「だからあんな噂…」
「…噂?」
『噂』
あたしはこの言葉に反応し、うつ向いていた顔を拓へ向けた。
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