第18話 柳川瑠衣オマケ

 それは10年前の話である。

 キャンプをした時の話だ。

「蓮。どうして野菜食べないの」

 バーベキューをしたのだが、蓮は野菜を残していた。

「不味いから」

 蓮の野菜嫌いに蓮の母も困っている。

 そっぽ向いてゲームをしていた。

 人参、ピーマン、キャベツ。バーベキューに入れる必須野菜は嫌いであった。

「はあ」

「姉さん。焼きそばの麺持ってきたよ」

 軽く十玉あった。

「ありがとう。蓮が野菜を食べないのよ。いつもの事ながら、困ったわ」

「いいじゃん。一緒に入れれば」

「それもそうね」

 蓮の母は野菜を追加させ、麺を入れかき混ぜる。

「蓮。焼きそば食べる?」

「うん、少しだけ食べる」

「分かったわ」

 瑠衣も手伝い、焼きそばは完成した。

「さあ、出来たわよ」

 蓮の母がお皿に焼きそばを盛る。

「さっ、蓮も冷めない内に召し上がれ」

 蓮の母が笑顔で言う。

「うん。いただき……ます」

 箸を持ち食べようとしたが、隣に目がいく。

 瑠衣のお皿には山盛り焼きそばが盛られていた。

 つい、蓮は二度見する。

 50センチはあった。

 この頃の瑠衣は成長期真っ只中で、今以上に食べていた。

「全部食べるの?」

 勿論、この質問はするだけヤボである。

 毎日食事を共にしていて今更な感じもする。

 天才児の蓮は返ってくる返事も分かっていた。

 しかし、しなければいけない、ある種のお約束である。

「うん。姉さんの作る焼きそばは別腹だ。何か問題ある?」

 女の子がスイーツを食べる時のようなセリフだ。

「いや、無いです」

 逆に質問で返され、蓮が困る。

 見ているだけで胸焼けするが、これが柳川瑠衣のブラックホール胃袋なのだ。

 肉も野菜もそれこそ蓮ね数倍食べている。

 同じ血が何処かで流れていても、似ない所が多かった。

 蓮の母は言っていた。

 蓮は物心つく前から読書をしていた。

 瑠衣は生まれた時から食欲旺盛だった。と。

 恐らく、蓮には想像出来ない位ミルクを飲んでいたのだろう。

(いや、似ているか)

 すぐ、蓮は訂正した。

 2人して度が過ぎる能力は似ているからだ。

 だからって、欠片も羨ましくは無かった。

 恐らく瑠衣も同じ考えを持っているだろう。

 しかし、これは凄すぎる。

「姉さん。うめぇよ」

 しかもよく味わっている。

 早食いを蓮の母が嫌ったからだ。

 早食いになれば、もっと量を必要とするのを、何とか食い止めたのだ。

(しかし、凄い量だ)

 瑠衣の箸は進んでいるが、食べても食べても量が減っていない。

 見ているこっちが嫌になる。

「蓮、箸が動いてないよ。上手く野菜を瑠衣の皿に入れるとか考えて無いよね」

「あっ」

 タイミングを完全に逃してしまった。

「食べなきゃダメ?」

「当たり前でしょう!」

「うん」

 優しく見守る母親珀姿がある。

「そうだよ。姉さんが作ったんだぜ。まあ、食わないなら、俺が食うけど」

「まだ、食うんかい!」

 蓮が突っ込む。

 もし、この時、未来を知っていたら、こんなに幸せを感じ無かったかも知れない。

 未来を知っていれば、今からどうするか考えていた。

 その時の蓮は今が当たり前だと、錯覚していた。

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