第15話 柳川瑠衣⑤

「ここは、お墓」

 次に蓮は墓地に足を運んでいた。

「何でここを?」

 今までは思い出の場所だったが、ここに来て、憶えのない場所だった。

 蓮は墓地の中を歩く。

 すると、巨体で黒服の男が現われる。

「墓を荒らすのは良くないだろう」

 蓮が呆れる。

「ここから先には行かせない」

「黒服。柳川の特殊部隊か、そこに何があるの?」

 特殊部隊とは柳川財閥が独自に実力のある人間を雇い、組織したチームである。

「答える義理も無い。ここで、ゲームオーバー何だからな」

 黒服の男が蓮を襲う。

「だから、あいつは鍵を寄越したのか、僕に何をさせたいんだ」

 蓮に黒服の男が突進してきたが、ギリギリで避ける。

「瑠衣、思い出、墓、そうか、この先にあるのは、しまった」

 大して体力がない蓮は、逃げ回っていても、疲れてしまいすぐに捕まる。

 黒服の男が、蓮を簡単に持ち上げ、蓮を地面に叩きつける。

「痛い」

 すると、目の前に墓が見えた。

「母さん。やっぱり、ここは、何でここを選んだ」

「さあ、倒したら教えてやる」

「言ったね。分かった」

 蓮は黒服の男に掴まれていたが、一瞬にして消えた。

「何処だ」

「ここだよ」

 蓮は目の前に現われ、風で出来た剣で、黒服の男の首筋に向ける。

「話してくれる?」

「まあ、いいだろう。お坊ちゃまからの伝言だ。線香の一本でも上げろ」

 お坊ちゃまとは、恐らく、瑠衣の事だろう。

「線香。そうか、僕は線香すら上げて無かった。母さん」

 蓮は蓮の母親、琥珀の墓の前に立つ。

「母さん。ごめんさない。僕は」

 蓮は手を合わせる。

 琥珀が死んで半年が経つ。

 幽閉されていたから墓参りに行かなかった。何て、言い訳でしかなかった。

 行こうと思えば何度も行けた。

 発信機が着いていても、やろうと思えば可能だった。

 蓮は目を閉じ、しばらくジッとしていた。

 しばらくして目を開け、周りを見る。

「なあ、ここに瑠衣の墓は無いの?」

「ありません」

「そう、か。で、そのお坊ちゃまから、他に伝言は無いの?」

 蓮は立ち上がり、黒服の男を見る。

「次の場所の地図を預かっている」

「それ、頂戴」

「分かりました」

 黒服の男が渡す。

「ありがとう」

 蓮が歩き出す。

「次は油断しないからな」

 黒服の男が捨てゼリフを言い、走り去った。

 蓮はもう1度琥珀の墓を見る。

「母さん。教えて欲しい。僕はどうやったら、瑠衣に許して貰えるんだ?」

 蓮は答えるはずもない質問をする。

「母さん。僕は罪を償えるかな?」

 蓮はそう言い残し、墓地を去った。



 瑠衣がタバコを吸いに行き、それから5分後……。

 ルームサービスの料理が大量にやって来た。

「おっ、来たか」

 瑠衣はタバコから戻る。

 中華料理がどんどん並べられた。

 その量はハンパなく多い。

「これ、全部食べるの?」

「そうだよ。蘭ちゃんも食べる? このホテルの中華料理は絶品だよ」

 確かにいい匂いがするし、見た目からも高級で美味しそう。

 蘭の家もメイドはいないが、金持ちだ。しかし、柳川家には足元にも及ばない。

 最高級の料理に決まっていた。

「いる!」

 思わず言ってしまった。

「そうこないと、ああ、俺も食べるし毒が入っていないのは保証するから、蘭ちゃん。どれ食べる?」

「エビチリ」

「分かった」

 瑠衣は蘭の為にお皿に盛り、箸と一緒に渡す。

 キラキラと輝き、本当に美味しそうだ。

「いただきます」

 蘭が口に入れる。

「美味しい」

「だろう。まだあるから」

「うん。それにしても、これ全部食べるの?」

「ああ、火の鳥って体にエネルギーを蓄える分、エネルギーを摂取しないといけないんだ。摂取方法は人それぞれだが、やたら寝たり、無駄に甘いものを摂ったりするな。俺の場合ガキの頃からよく食べていたよ、この位は楽勝だな」

「体格がそれなのも納得したわ」

「頂きます」

 瑠衣が左手に箸を持ち食べ始める。

「うん。美味い」

「ホント好きだね」

「ああ、食べている時と可愛い子と一緒にいる時は幸せだな。だから、今はすんげぇ幸せだよ。なあ、蘭ちゃん。俺と付き合わない?」

 唐突に言う。

「低調にお断りします」

 蘭は即答する。

「ええっ、何で」

「浮気するでしょう?」

「浮気は言い方よくない! 俺は好きな女の子と一緒にいたいだけだ。1人に絞る何て恐れ多い事出来ないよ」

「その考えが嫌なの」

「そか〜じゃあ、蓮はいいのか?」

「ええ、少なくとも、他の女性に目移りしないじゃない。あんたと違って、って、何聞いているのよ!」

「ふうん。好き何だ」

 青椒肉絲を口に入れる。

「別に、私は蓮君の姉代わりで、蓮君が好きな訳じゃ……」

 蘭がモジモジする。

「いいよ。知っていたし」

「違います……そんなに、分かり易かった?」

「この酢豚うめぇ」

「聞いています?」

「聞いてるよ。現実見たくないだけだ。その1言で俺は蓮に嫉妬しているから。負けも認めたく無いし、だから、手に入れたいと言う気持ちもあるな」

「あんたも負けず嫌いだったか」

「そりゃ、男の子に生まれたんだ。勝負には拘らないと」

「そう」

「だから、蘭ちゃんが欲しい」

「お断りします」

「ひでぇ」

 蘭と瑠衣は笑っていた。

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