第12話 柳川瑠衣②
「瑠衣……」
叔父の名前を口にする。
蘭が瑠衣を見ている訳が無いのだ。
「僕が殺したんだ」
瑠衣の温もりが無くなっていくのを、蓮は忘れなかった。
『柳川の人間の考えている事は分からない。火を使う左利きの男を見つけ、整形させたんだ』
蓮はそう決め付け、蘭に説明した。
勿論、蘭は柳川の人間に怒りを見せたが、それしか考えられないのだ。
少なくとも、蓮にはその考えしか浮かばない。
もし、例え、あの瑠衣が本物だとしたら、何かしらのコンタクトを取るはずだが、それすらも瑠衣は行っていない。
インターネットで瑠衣を調べたが、確かに瑠衣は活動している。
(だったら、何故何も言って来ない)
蓮は苛立つ。
瑠衣と蓮はそれこそ兄弟のように育った。
瑠衣の母親、蓮の祖母は瑠衣が幼い頃に病気で他界。琥珀とは12歳も年が離れているので、姉よりも母親代わりに近いのだ。
蓮とも5才しか離れていない。
蓮も瑠衣を兄として慕った。最も、兄と言うには不甲斐ない絵に描いたダメな兄だったが、それでも、慕っている事には変わりない。
半年前までは……。
蓮は自分の力の暴走が原因で、大事な人を1日で全て失った。
柳川や橘の人間から犯罪者が出てくる事を避けた領家は、名前を守る為に蓮を幽閉した。
2人を殺め、幽閉で済んだのだ、蓮は甘んじて受ける事にしていた。
それだけの大罪を蓮が犯しているのだ。
しかし、今、そんな叔父の偽物が現れていた。
蓮は気にならないはずがない。
蓮は携帯電話を出し、瑠衣の番号を見る。
勿論、半年間、この電話番号に電話をしているはずがない。
蓮はじっと見つめる。
すると、その番号から電話が掛かる。
蓮は驚きながらも、電話を取る。
『久しぶりだな。蓮』
「瑠衣……」
『何、驚いているんだ? ちゃんと、コンタクト取ったはずだろう。伝わって無かったか?』
「蘭を使ってか?」
『そうだよ』
「何を考えている。柳川瑠衣は死んだ。僕がやった。だから、柳川瑠衣はもういない!」
『そうだな』
「お前は誰だ」
『そんなに死んだ人間が生き返った事が気になるか? 教えてやってもいい。俺が何者か、だが、タダ教えちゃ、つまらないからな。ゲームをしよう』
「ゲーム。ふざけるな」
『いいじゃないか、お互いゲームは好き何だから、ルールは簡単俺を捕まえれば、蓮の勝ちだ』
「そんなゲームやるか」
『そいつは残念だ。ポスト見てみろよ。蓮の大事な人、俺はいつでも壊す事が出来るんだぜ』
「まさか」
蓮は急いでポストに向かい、小堤を発見する。
中を開けるとそこには、人の人差し指と、顔と体を縛り付けられた写真が入っていた。
「本気なのか?」
『ああ、本気だよ。分かるよな。誰の指か』
「蘭か?」
『そうだ。早く見つけないと、彼女がどうなる事やら』
「瑠衣。分かった。そのゲームやってやる」
『そうこないと、箱の蓋に地図がある。まずはそこに向かってくれ、んじゃ、精々楽しませてくれよ』
「分かった」
瑠衣は電話を切った。
蓮は箱の蓋にある地図を見る。
(何を考えている)
蓮は地図を見て、眉間にシワを寄せた。
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