第9話 浅野蘭④
『瑠衣。あなたにこれを』
赤い石がはめられた指輪を渡した。
「姉さん?」
幼い瑠衣が美女から指輪を貰う。
『あなたには必要な物だから、肌身離さず持っているのよ』
「うん。姉さん。ありがとう。大事にする」
瑠衣は笑顔で受け取る。
美女は瑠衣の頭を優しく撫でた。
それからしばらくの後。
瑠衣はゆっくり、目を開けた。
「大丈夫ですか? RUIさん」
「ううっ、直美ちゃん」
瑠衣は部屋にあったソファの上に眠っており、近くで、女性スタッフの直美が、異能力で、瑠衣の傷を治していた。
「ありがとう……」
瑠衣は起き上がり、咳き込む。
「まだ、大人しくして下さい。生きている事だって不思議なんです」
「そうか。所で、直美ちゃんはよく捕まらなかったね」
「はい。この部屋のクローゼットに隠れていました。異能力者を駆逐させていたみたいだけど、この部屋にはあなた方がいたので」
「そうか、あのドサクサで気付かれなかったか、ともかく助かったよ」
瑠衣はナイフを拾い、懐にしまう。
「はい」
「さて、あいつら潰しに行くか」
「ダメです。敵が多すぎです」
「そうだな。でも、蘭ちゃんが連れ去られたんだ。黙って退くほど俺はお人よしじゃないんだよ」
「ですが」
「直美ちゃんはここにいてよ。すぐ終わらせるから」
瑠衣は笑顔で部屋を出て行く。
しかし、その笑顔は少し不気味な雰囲気が見え隠れしていた。
その顔は瑠衣が見せた事の無い。少なくとも、モデルのRUIは見せない笑顔だった。
直美はそれを見て瑠衣を追いかける事が出来なかった。
人質を船の甲板に上げ、蘭を小久保が甲板に連れて行く。
「どうして、こんな事するの!」
「知ってしまったからさ」
蘭は縄に縛られ、小久保が今から海に落とそうとしていた。
「変態・外道・自己チュー」
「何だと、俺は変態でも外道でもない!」
「自己チューは認めているんだ」
「黙れ、死ね」
小久保は蘭を落とそうとする。
しかし、炎の玉が飛び、海賊の1人に当たる。
「蘭ちゃん。助けに来たよ。ついでに俺の愛も受け止めて」
瑠衣は投げキスをする。
「あんたバカか!」
「瑠衣。生きていたのか?」
小久保が驚く。
「ああ、回復の能力者が近くにいたからな」
「中の見張りは?」
「全員寝てるよ。言っただろう。俺は喧嘩に強いんだ。異能力もあるしな」
「バカな。異能力者はあらかた調べ、片付けたはずだ」
「みたいだな。外で死んでいた船員は大体、異能力者だったみたいだから、そうだと思った。しかし、異能力者が同じ異能力者を殺める何て不届きもいいもんだな」
瑠衣は指から火を出しタバコに点け吸う。
「まあ、どっちでもいいけど、それよか、せっかく料理と可愛い女の子とのパーティを楽しんでいたのに、よく台無しにしたな」
「あんた、やっぱりアホなのね」
蘭が呆れる。
「だから、何だ。俺は水の能力者だ。火の力に負けるか」
「やってみろよ」
瑠衣が挑発する。
「黙って聞いていれば」
小久保は蘭を投げ飛ばし手に集中させ、腕を変形させ剣を作り上げる。
「なる程、本気のようだな」
瑠衣が目を細め、分析する。
「悪いが、その程度なら、俺は倒せないよ。自慢じゃないが、俺は本当に強いんだ」
瑠衣はタバコをくわえたまま、小久保の所へ向かう。
「ふざけるな!」
小久保は腕を振り下ろす。
「何もふざけて無いさ」
瑠衣は左手1本でそれを受け止める。
すると、腕が蒸発を始めた。
「熱い! 何だと、だったら、これならどうだ」
小久保は身体の一部を水にして、海水に流れ身体とくっついた海水で大波を起こし、どっと船の中に入ろうとする。
「お前、味方も巻き込んでいるぞ」
小久保の後ろにいた海賊は大波に流される。
「はあはあ、関係無い。お前はどうする?」
息を切らせ言う。
今の攻撃で精神力を使ったようだ。
「そうかい」
瑠衣は瞳を赤く光らせる。
「ファイヤーウォール!」
残った右手を使い、蘭の目の前に火で出来た壁を作り、海水を蒸発させた。
「バカか船が燃えるぞ」
「いや、燃えないよ。俺の炎は青の炎と呼ばれ、無害の者には、触れても熱く無い聖なる炎となっている。お前の攻撃は蒸発するが、船は燃えない」
小久保とは違い、瑠衣は息1つ乱れていない。
「本当だ。熱さが感じない」
1番近くにいた蘭がその火に触れる。
「お前の異能力とは格が違うんだよ」
瑠衣は残った右手で小久保の顔面を殴り、小久保の体を上手く倒す。
「お前みたいなクズ。虫唾が走るんだよ」
瑠衣は見下し、そして……。
ボキッ
小久保の右腕を有り得ない方向に曲げ、骨を折る。
「ああああっ」
小久保が大きな叫び声を上げる。
それだけでは飽きたらず、瑠衣は左腕も同じように折った。
その時の瑠衣の顔は怪しく笑っている。
「俺に喧嘩売ったんだ。その位の対価は払って貰わないとな」
顔面を踏みつける。
「ほらほら、異能力出してみろよ。ああ、腕が折れたから無理か。ざまあねーな」
瑠衣はしばらく、小久保に暴行をくわえ、白眼を向いた所でその手を止めた。
「何だ。つまんねー」
蘭はしばらく、声がかけられなかった。いや、その場にいた全員が瑠衣に声をかける事が出来なかった。
瑠衣はタバコを携帯灰皿に入れ、新しいのを吸う。
「さあ、コイツら縄くくりつけようか」
瑠衣がいつもの笑顔で言った。
「ん? みんなどうしたの?」
恐れている事に無自覚であった。
その後、港に着き、瑠衣には迎えが来ていた。
「楽しかったぜ。蘭ちゃん。又、何処かで会えるといいな」
「えっ、うん」
「じゃあな」
瑠衣は手を振り、車に乗り込み、車は発進した。
「変な人」
蘭も微笑み帰った。
後部座席に瑠衣は乗り、隣に座っていた男と話した。
「どうだった。瑠衣」
その男は蓮を幽閉した柳川緋矢である。
「まあまあだな。海賊が襲いかかったのはくだらなかったよ。大した事無かったからな」
瑠衣はタバコをくわえる。
「そう言うな。しかし、チケットを置いて乗り込むとはな」
「爺ちゃんの預言にあっただろう。忘れた方が、いい出会いがあるって、実行しただけだよ」
火の力を出し、タバコを吸った。
「そうだな。それで収穫はあったか?」
「ああ、バッチリあったよ。あの子は蓮にとって必要な子だって分かったよ。とても、欲しいな」
瑠衣は怪しく笑う。
「そうか、玩具が見つかってよかったな」
「ああ」
瑠衣は短く頷いた。
蓮は書斎で、本の整理をしていた。
本棚から本を取り出すと埃をはらう。
そして、本棚に戻したり、いらない本は床に置いたりしていた。
その床に置いた本をダンボールにいれているのが、蘭である。
「蓮君。写真が落ちたよ」
ヒラヒラと本と本の間から落ちて来た写真を拾いそれを見た。
「あれ、蓮君。知り合いだったの?」
「誰と誰が?」
「蓮君と、ほら話したでしょう。変なモデルさんと仲良くなったって、写真にその人写っているじゃん。蓮君の隣に」
蘭は蓮に指を差し写真を見せる。
蓮はそれを見て、持っていた本を落とす。
そして頭を抱える。
「そんなバカな」
「何言っているの?」
「そんなはずない」
「だから」
「君が出会ったのは本当にその人なのか?」
「失礼ね。本当よ。瑠衣って言って、大食らいで気さくな人だったわ」
「そんなはずない。柳川瑠衣は半年前僕がこの手で殺めた僕の叔父だ。生きているはずが無い」
「嘘」
蘭はその男を思い出し絶句した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。