第8話 浅野蘭③

 蘭はオークション会場に足を運んでいた。

「蓮君。どうしよう」

 そして、真っ先に蓮に電話していた。

『何が?』

「何がって、海賊が現われたの」

『そう』

「そうじゃなくって、ピンチを助けなさいよ」

『無理。僕、力使えないし、助けられない』

「何よ。薄情ね」

『そう言う問題?』

「じゃあ、どうするか、知恵を貸しなさいよ」

『何で?』

「何でって」

『1つ、僕はここにいて、助ける材料となる情報が少なすぎる。2つ、だからって、君を助ける事ができない。3つ、そもそも君を助けて、僕に何の得があるの。元々、君が勝手に……』

 ぶちっ

 電話が切れた。

「はあ、身勝手な女だ」

 電話の前で、蓮が言う。

 蓮はピザを食べながら、ゲームと読書を一緒にやっていた。

「まあ、いっか」

 気にせず遊んでいた。


「何よ。薄情者。って、電話がつながらない。電波ジャックされた?」

 蘭は戸惑いながら、ジャックされたオークション会場を見ていた。

 瑠衣が船内で出会った。雑誌記者の小久保と美人セレブの瞳がいた。

 皆、縄で拘束され、海賊達は銃をちらつかせていた。

「妙な真似するなよ。殺されたくなければな」

(どうしよう)

 蘭は困っていた。

 船内に残っている人も次々集められる。

「くそー」

 小久保が、異能力で水を起こし、海賊達に立ち向かう。

「利かないな」

 海賊の1人がスタンガンで雷を起こし、小久保を痺れさせる。

 そして、小久保は腹部を撃ち抜かれた。

「きゃー」

 人々の叫び声がする。

「抵抗した奴と異能力者は殺せ」

 オークション会場で、異能力者を判断されると、次々見せしめで殺されていった。

「どうしよう」

 蘭は困惑する。

 そして、背後から、蘭の口を抑える。

(えっ)

 そのまま、近くの部屋まで連れて行かれる。

「ちょっと、何をするのよ!」

 抑えた体の拘束が緩んだ隙を狙い、蘭は一本背負いをお見舞いした。

「どう!」

「あたたたっ、蘭ちゃん強すぎだよ」

「瑠衣」

 蘭が投げたのは瑠衣だった。

「蘭ちゃん。1人で突っ走っても解決しないよ」

「だからって、後ろから口を抑えても……」

「蘭ちゃん静かにして」

 瑠衣が近くの部屋に蘭を連れ入り、息を潜める。

「まだ、人が残っていないか?」

「あっちを探せ」

「ああ」

 2人の覆面の男が別れて、船内を探す。

「ふう、あぶねぇ。さて、これからどうするか?」

「どうするも、人質を解放して、海賊をやっつけるのよ!」

「携帯使えないし、どうやって?」

「何か方法があるわ。絶対、どうやってか外に連絡して」

「外に連絡しても、ここは海の上だぞ。助けが来る前に、皆殺しにするのは可能だ」

「だからって、見捨てるの?」

「そうは言ってない」

「じゃあ」

「いたぞ!」

 扉が開き、銃口に火が噴く。

「げっ、バレた」

 瑠衣は咄嗟に火の噴いた銃を目掛けて蹴り、銃を吹き飛ばした。

「まずは1人」

 隙ができ、顎を目掛けて蹴る。

 男は一撃で気絶した。

「瑠衣」

 蘭が吼える。

「ガキが!」

 別の男が銃を撃とうとする。

「俺は25才だ!」

 瑠衣は懐に隠していたナイフを取り出し、男の腕を切った。

「こいつ」

 それでも、銃を撃とうとする。

「動きは見えている」

 瑠衣は背後に回りこみ、腕を締め付け、男の首にナイフを当てる。

「あんま手荒な真似したくないから、大人しく、縄につながれて、話をしてくれない?」

「ううん」

 仕方なくしたがった。

(瑠衣、強い)

「蘭ちゃん。縄」

「あっ、はい」

 蘭は言われた通り、縄で縛った。

「凄い。瑠衣って、何処でそれを?」

「昔取った杵柄だ。ただの喧嘩作法だよ」

「喧嘩って」

「さて、聞かせて貰おうか。この船を何故襲った?」

「分かっているだろう。金持ちばっかじゃん」

「ああ、確かに。だけど、猛者だってこの船に乗っているだろう。それこそ、異能力者だって、どうやって……」

「それはこうやってだ」

「お前は、しまった」

 瑠衣の背後から、いきなり水が流れ人の形になり、小久保が現われた。

 瑠衣が振り向いた時には既に小久保の右腕が伸び、瑠衣の首を絞める。

「どうして、あなた撃たれたんじゃ」

 蘭が指摘する。

「ああ、撃たれたが、俺の身体は水で出来ている。撃たれても死なないんだよ。あれは演技だよ。それより、RUI君が、まさか、海賊を手玉に取るとは思わなかったよ。そんなに強かったんだ。でも、異能力者の前では無力だな」

「どう言うつもりだ?」

「海賊が豪華客船を襲うなんて、いい記事が書けるじゃないか、俺はドキュメントが書きたくってね」

「海賊と手を結んだのか。バカだな」

「何とでも言え」

 小久保が力強く首を絞める。

「あっ、ああ」

 瑠衣が手を上げ、ナイフを取り出したが、力が入らず、落としてしまう。

「無駄だ。お前の身体と俺の手は同化している。呼吸は出来ないが、脳にも水を浸食させたから、力も入らないはずだ。死ね」

「に、逃げろ」

「出来る訳ないでしょう! 瑠衣から離れなさい!」

 蘭が突進する。

「ダメだ。そいつは……」

「おてんばだな」

 左手が水の玉になり、蘭の顔を覆う。

 蘭は息が出来ず、気絶した。

「止めろ……」

「RUI君。やっぱり、好きなんだ。彼女の事」

「だから、何だ? 関係ないだろう」

「そうだな。ふん。気に入らないな。死ね」

「ああっ」

 瑠衣は全身の力が抜け、首を倒した。

「いいさ。その子は助けてやる」

 瑠衣を落とし、蘭を連れ去った。

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