第5話 橘蓮オマケ

 蓮の屋敷に蘭が遊びに来ていた。

 蓮はその時、ソファに寝転がり本を読んでいた。

「蓮君って、読書好きなの?」

「嫌いなら読まない」

「確かに、ねえ、何読んでいるの?」

 包装紙に包んでいて、表紙を見ることが出来なかった。

「何でもいいだろう」

 蓮は面倒くさそうに言う。

「ねえ、教えてよって、何よこれ!」

「本だけど?」

「中身よ! 子供がこんないかがわしい本読むな!」

 蓮は女性の裸の写真を見ていた。

 蘭は思わず取り上げる。

「言葉を返すが僕は二十歳だ。法に触れていない!」

 流石の蓮も子供扱いされて怒る。

「大体覗く方が問題だ。表紙も君の為にわざわざ隠していたのに」

 更に付け足す。

「蓮君は可愛くなきゃいけないの! こんな本を読んだら可愛くないでしょう」

「どんな理屈だよ」

「違うの? 分かったわ。蓮君。まだ、童貞でしょう」

「なっ」

「だから、女性に飢えて、こんな血迷った事したんだ。だったら、ゴメン」

「君さ。どうしてそう人の話を聞かずに勝手に結論づけるの?」

「違うの?」

「違うから」

「でも、童貞でしょう?」

「それも違うから、ってか、何、その話」

「そんな蓮君嫌だ。蓮君は童貞じゃなきゃ嫌だ」

「何それ」

「蓮君は真っ白じゃなきゃ嫌なの」

 蘭が泣き出す。

「意味分からないよ。ってか、何でこうなるかな」

「酷いよ」

「ああ、分かったから、悪かった。卒業していて悪かった。だから、泣くな」

「違うよ。蓮君は童貞なの」

「分かった。僕はまだ、童貞だ」

「そうだよね」

 蘭が笑う。

「蓮君は真っ白だもんね、心も身体も、うん。やっぱりそうなんだよ。ダメだよ見栄張っちゃ」

「見栄もウソ言ってないんだが、君、女の子だろう。どうして下品な方向にいくかな」

 蘭が持っていた本を奪い返す。

「どっちでもいいけど、僕の趣味に口出さないでくれない?」

「ねえ、ちなみにどんな女性が好みなの?」

「胸の大きい。才色兼備。純情可憐で清廉潔白な女性。絶対に暴力なんか奮わない、弱い者を無理矢理屈服させない女性」

 まるで、蘭とは正反対であった。

「なっ」

「小さい胸ちらつかせて、お姉さん気取る下品な暴力女は嫌いだ」

「なんですって!」

「ああ、自覚あった。ヤバいから逃げよう」

 蓮は蘭の雷が落ちる前に行動に移し、書斎に逃げ込む。

「こら、開けなさい!」

「嫌、静かに本が読みたい」

「そんな女性の下半身を見て、興奮するような本は止めなさい! そんなに飢えているなら私の身体を見なさいよ」

「得がない」

「リアルを愛しなさい!」

「そう言う問題じゃないから」

 蓮は書斎の扉に鍵を掛け、耳栓をつけ、ソファの上で続きを読んだ。

「やっぱり、女はこうだろう」

 そして、蘭とはかけ離れた本の中の女性を見て、少し興奮していた。

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