7.公園
ゴールデンウィークで行楽地は賑わいを見せる中、学校から真っ直ぐ進み、大通りを渡った次にある道路を右に曲がるとたどり着く公園には、普段の活気は何処へやら、浩太を除いて誰もいなかった。
夕暮れ時、空は赤みがかった紫色をしており、夜の気配はまだ少し遠かった。ブランコや滑り台、置いてある空きコンテナの影が長い。公園を囲む木々も不気味なほど暗かった。それらの影が道路の方にまでかかっている。地面はどっぷりと影に浸かっていた。対して遊具自体は西日を受けて輝いている。真っ黒な地面も相まり、絵の具を塗りつけたような赤さを感じさせた。この空間ではあまりに眩しかった。
ボン、ボン、とボールを蹴りつける音がする。コンテナの暗がりへと目をやると浩太の姿がぼんやりと浮かび上がった。
浩太は学校に置いてきてしまった宿題を取りに行った帰りである。ついでに遊んでから帰ろうと蓮二や明に電話をかけたのだが、どちらも留守電。かけてから暫くした後に、彼らが旅行に行くと言っていたのを思い出した。他の家にかけてみても大抵は留守、もしくは明日から出掛けるからその準備をしている、と返ってきた。六人くらいにかけてみて、浩太はこれ以上誘うのを止めた。
浩太の用事は一時間前には済んでいる。帰らないのは家にも居たくないためだ。親からあれしろ、これしろと口を出されるのが嫌だった。特に今の気分なら尚更である。
浩太は無言でボールを蹴り続ける。ボン、ボン、とコンテナの壁にボールがぶつかる音だけが木霊した。
結局浩太が公園を離れたのは十七時の放送が流れてからだった。その頃にはもう日が沈み、見える範囲は全て暗かった。西の空だけはまだ群青色を残していた。
とぼとぼと浩太は家へ向かった。
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